シャープを救った台湾企業、鴻海(ホンハイ) サムスン潰しへの野望

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規模追うモデルは転換期迎えた

鴻海を語るうえで、避けて通れない暗部がある。巨大工場での労働問題だ。10年春、深センの子会社でアップル製品を手掛ける富士康国際で、わずか3カ月の間に12人もの工場従業員が飛び降り自殺した。11年には四川省成都のアイパッド工場で爆発事故が発生。長時間労働や安全管理が疑問視され、アップルが民間調査団体・FLAに工場の実態調査を依頼する事態に発展した。

実際には、「中国の同業工場においては鴻海の労働条件・環境は決して著しく悪くはない」というのが、FLAの調査結果だ。だが、「労働者を搾取する血と汗の工場」というイメージは世界中に広まり、結果として、賃金切り上げや待遇改善というコスト増をもたらした。

規模を追う鴻海のビジネスモデルは、一つの転換期にさしかかってもいる。売上高が驚異的に成長する一方、顧客の絶え間ない値下げ要求で、収益力は着実に低下している。07年度から11年度の5年間で、年商はちょうど2倍になったが、営業利益は小幅減少。前述の労務コスト増がさらに足を引っ張る。

今回、シャープへの出資で鴻海は約1300億円を投じた。さらに、前述の堺とブラジルの2案件では、4000億~5000億円もの巨額投資が想定される。“サムスン追い落とし”が失敗すれば、鴻海は確実に衰退期入りするだろう。

「成功する自信なんてどこにもない。だが、どんなに厳しい環境でもゴキブリのように生き抜いてみせる」。かつて郭董事長はそう台湾のメディアに語った。水平分業時代の寵児が打つ大ばくちが今、世界の電機産業を動かそうとしている。


(杉本りうこ =週刊東洋経済2012年4月14日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。撮影:尾形文繁

 

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