中国で《抗日映画》が“興収500億円超え”のヒット。鑑賞後に「子どもが日本アニメのカードを破り捨てた」との報道も…。戦争と教育を考える
例えば、「私は自分では見に行かないし、子どもを連れて行くなんてもってのほか。昔、似たような映画を見てすごく怖かった記憶があって、悪夢まで見たことがある」というコメントもあった。
こんな冷静な意見もあった。「思い出すのは、2020年2月、新型コロナが中国で拡大したとき、日本から届けられた支援物資に添えられた言葉だ。武漢には『山川異域、風月同天』(山や川は違う土地にあるけれど、風も月も同じ空の下にある)、湖北には『岂曰无衣、与子同裳』(衣なきと言うなかれ、君と共に裳を着よう)、大連には『青山一道同云雨、明月何曾是两乡』(遠く離れていても、同じ山に同じ雨が降る。月は一つ、君と私の心を隔てるものはない)。80年前の日本の軍国主義と、今の日本の人々とは、まったく別の存在だ」。
私が先述の教授に『南京写真館』について意見を求めたところ、彼の視点は明らかに未来志向だった。
「この作品の上映を機に、再び反日的な空気が生まれている……。私が日中歴史ドキュメンタリーの制作で一貫してきたのは、苦難を過去のものとして記憶し、平和を守り、未来をこいねがう姿勢だ。
憎しみに囚われるのではなく、負の遺産を正の遺産へと転じたい。それこそが文明の本質だと私は思う」。中国のインテリ層の多くは同様の理性的な見解を抱いているようだ。

「恨みの再生産」を危惧している
歴史を語ることは、過去の悲劇を忘れないために必要な営みだ。とりわけ戦争の記憶は、加害と被害の両面から丁寧に伝えられるべきだ。しかし、感情を強く揺さぶる映像表現が、幼い子供にとってどのような影響を与えるかは慎重に考えなければならない。
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