内閣府が7月に発表した2025年度の経済財政報告(経済財政白書)に、ちょっぴり気がかりな記述がある。独自に行った調査で、もし所得が増えたとして、どんな消費を増やしたいかと尋ねたところ、「特に増やすものはない」と回答した割合が26%あったという。可処分所得が増えたとしても、別に欲しいものや使いたいものがないと考えている人が3割近くいるのだ。
モノ消費よりコト消費などといわれて久しいが、周囲にモノがあふれ、欲しいものがあってもネットやフリマアプリ経由で安く買えるご時世だ。政府が躍起になっても、消費喚起が難しいマインドに私たちは陥っている。
ところが、“無料”でモノがもらえると聞けば、どっと数万人が集まるのだ。それも、何がもらえるかはその場に行かなければわからない。受け取ってみて、期待とは違ったと感じるモノもあるだろう。それでも満足だ。「何がもらえたか」よりも、「タダで手に入れた」ことの快感を味わいに人々は集まってくるのだから。
無料は本当に対価を払っていないのか?
この世にはさまざまな“無料ビジネス”がある。例えばコンビニに行くと「おにぎりを買ったらドリンク1つ無料」というキャンペーン。あるいは、一定量たまると無料で飛行機を利用できるマイレージのシステム。デジタル界隈に多いのは、最初は無料でサービスを体験してもらい、その後有料プランに導く「フリーミアム」という手法だ。
ビジネスでいえばZoomやChatGPTなどのサービスがそれにあたる。ひと月無料でお試し利用してもらい、そのまま有料プランに移行するYouTubeプレミアムなどの無料トライアル手法もおなじみだ。これらは少し考えると、「無料には条件がある」「無料の先には、何らかの支払いが待っている」とわかる。
では、その場限りのサンプル配布ならどうか。私たちは、それ以上お金を払う必要はないのか。配布する側としては、まず消費者と接点を作り、試供品を試してもらい、次回の消費につなげるというのが大きな目的だ。
そのためにも、ドラッグストアショーのブースではサンプルを渡す前に効果効能にまつわるミニクイズや寸劇的なセミナーを組み合わせて商品理解を深めようとしている。商品の価値を伝えることで、実際の売り場で手に取ってもらいたいからだ。また、「こんな商品のサンプルがもらえた!」とSNSでの拡散も期待できる。
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