【ベトナム現地ルポ】マンション価格が5年で爆上がりエリアも! 日本も参画、10年で激変したマンション市場の最前線

その課題に対して、東さんはベトナムの「急速な政治改革」に期待を寄せる。
ベトナムは社会主義の国でありながら、1986年に導入したドイモイ政策により市場経済活性化を目指してきた。国家主導の行政改革スピードの速さは今も健在で、「特に2024年にトー・ラム氏が新書記長に就任してからは著しい変化が起きています」と東さん。
今までベトナムでマンション供給数の拡大を阻害していたのは、政府による許認可のプロセスに寄るところが大きかった。複雑かつ時間がかかっていた許認可も、現在は改善傾向を見せている。
「トー・ラム新書記長が“反浪費運動”をスローガンに掲げたことで、ここ1年で許認可も大幅な合理化とスピードアップが進んでいるようです。市場の健全な発展を後押ししてくれることを期待しています」
ライフスタイルの急激な変化に伴う課題も
ホーチミン市だけでなく、首都ハノイ市など各都市でマンション市場は拡大し続けている。
ベトナムのマンション市場は、単なる不動産投資の対象ではなく、日本企業が長年培ってきたマンション品質やまちづくりのノウハウを発揮できるフロンティアだ。文化や環境、常識が異なる国に参入する苦悩、コロナ禍の不況など過去の苦難を乗り越え、マンションの「ジャパン・クオリティ」評価は成熟期を迎えつつある。
一方で、ライフスタイルの急激な変化にともなう課題もありそうだ。
ホーチミン市内を歩いていると、道沿いに個人経営の店が所狭しと並び、その店の前で人が休憩したり、おしゃべりをしている姿をよく目にした。まちに迷路のように張り巡らされた路地裏「ヘム」では、家の軒先で洗濯をしたり、子どもの世話をする光景が当たり前。

「路地で座り込みくつろぐお母さんに、なぜ1日の多くの時間を家の中ではなく、家の前で過ごすのか聞いたことがあるんです。ヘムは、ただの路地であったり、寺があったり、場所によっては店舗が連なっていたりする。
彼らは客がいようがいまいがお構いなしにずっと路上で過ごしている。なぜか?答えは、『社会とつながるためだ』と言っていました」という東さんの言葉が印象に残っている。
まちや人とつながる日常から、プライバシーが守られたマンションの暮らしへ。
かつて日本の高度経済成長期にも、急激なライフスタイルの変化による人間関係の希薄化や家族の在り方、価値観の変化、働き方の変化などにともない、新たな課題も生まれた。
これからもベトナムはどんどん変わっていくだろう。
紆余曲折もあるかもしれない。それでも、その成長していく街並みに日本が今まで培ってきた技術をもって関わっていくことを思うと、誇らしい気持ちもあり、これからもこの躍動に注目していきたいと感じた。
(取材・文/SUUMOジャーナル編集部 高橋 七重)
野村不動産ベトナム
ベカメックス東急
※「各国の都市化」の表について
・都市化の定義:
都市化率(Urbanization Rate)…都市部に住んでいる人口の割合
※都市化率(%)=(都市人口 ÷ 総人口)× 100
・一般的な分子と分母
分子(Numerator):都市人口(Urban Population)→ 中央政府が定めた「都市部」とされる地域(市、町、区など)に居住する人の数。
分母(Denominator): 総人口(Total Population)→ ベトナム全体の人口(都市部+農村部)。
・ 都市部の定義(ベトナム政府の基準)
ベトナム政府は、都市部(urban areas)を以下のように定義
法的に「都市」と指定された地域(市:thành phố、町:thị xã など)
一定の人口密度・インフラ・行政機能などを備えた地域
中央政府または省政府によって都市等級(1級~5級)として分類される
・補足:ベトナムの都市化率の推移(参考)
2010年:29.6%
2020年:約36%
2024年(推定):約41~42%
・政府目標:2030年までに都市化率を45%以上に引き上げる(ベトナム建設省の目標)
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