「浮いてしまうなら、いっそ浮かせてしまおう」。発想の転換は、国立防災科学技術研究所との共同による実物大実験を通して導き出された。
実験では3000トンもの水を使用して一般的な住宅と比較。その結果、通常の住宅では床下・室内まで浸水するのに対し、一条の耐水害住宅では建物内部への浸水はゼロだった。

しかし同時に、ある水位を超えると建物全体が浮き上がってしまうことが明らかとなった。建物の重量は約70〜80トンにもかかわらず、浮力に抗えない。「どこまでも水密性を高める」という発想では限界があり、浮いてしまうことを前提に、むしろ安全に浮かせるという逆転の発想に至った。
浮いても壊れないための工夫
浮く家とはいえ、原則として水害時は避難が前提だ。ただし、被災後に戻ってきた際、家具や設備が壊れていては生活の再建が遅れる。そのため、この住宅は「浮いても壊れない」「すぐに元の暮らしに戻れる」ことに重点を置いて開発されている。
さらに、建物が浮くと、上下水道や電力などのライフラインへの接続が課題となる。これに対して一条工務店は、「離脱できる接続」という新たなインフラ思想で対応している。

例えば上下水道は、建物の直近でジョイント機構を設け、浮上時には自動で分離し、破損や漏水を防ぐ。電力供給は、引き込み線にテンションがかからないよう、小屋裏に破断機構付きの予備線を備え、万一の際にも配線損傷を最小限に抑える。
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