ついに日本でも実用段階に入った!深刻化する《水害》を強靭に生き抜く「浮く家」の衝撃

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「水は脅威ではない。チャンスだ」と語る彼の言葉が象徴するのは、気候変動時代の都市設計におけるパラダイムシフトである。

そもそも、なぜ巨大な建物が水に浮かぶのか。カギは「浮力」にある。

浮力とは、水中にある物体が水から受ける「押し上げる力」のこと。アルキメデスの原理によれば、その力の大きさは「物体が押しのけた水の重さ」と等しい。つまり、物体の体積が大きければ、それだけ大きな浮力を受ける。材質によっては沈むが、体積を工夫することで巨大な船や建築物も水に浮かぶようになる。

例えば、木材は水に浮きやすい。その特性を生かして人類はイカダを作り、やがて船となり、大航海時代を切り開いた。

オルトゥイス氏によると、再生可能な木材(CLT:直交集成板)を用いて水に浮かぶ40メートル級の木造高層ビルの建設、生態系保全を目的としたフローティング人工林、水上に浮かぶクルーズターミナル、モジュール式の人工島など、技術の応用範囲は都市・環境・インフラへと広がっている。

フローティング建築の最大の魅力は、その柔軟性と再配置性にある。必要がなくなれば移動でき、老朽化した建物を取り外して再構築することもできる。都市の「固定された形」から「流動性を持った都市」へ。これが水上都市がもたらす、もう1つの発想転換だ。

浮く家が水害から暮らしを守る

豪雨や内水氾濫による浸水被害が相次ぐ中、「住宅は沈まない」という発想が現実の技術となっている。全国で2000棟以上の導入実績を持つ一条工務店の「耐水害住宅」は、一定の水位に達すると住宅が浮上し、専用の係留装置によってその場にとどまりながら災害をやり過ごす。

この住宅は、2023年に「日本建築学会賞(技術)」を受賞したほか、「グッドデザイン賞」や「キッズデザイン賞」、さらには「気候変動アクション環境大臣表彰」なども受賞しており、技術的にも社会的にも高く評価されている。

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