最高益予想だったIHI、下方修正連発の病巣 前期も巨額特損、投資家からは見切り売り

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しかも、ドリルシップ船体の工事が予定より大幅にずれ込んだため、後続のFPSOの船体工事にも支障が出た。人的リソースや作業スペースの問題から、その工事の一部を外注せざるを得なくなり、FPSO船体工事も想定以上にコストが膨らんだ。

IHIは前期も海洋資源関連に足をすくわれている。ブラジル政府の協力要請でドリルシップなどを作る現地の造船所に経営参画していたが、国営石油会社や建設、造船会社などが絡む大規模な賄賂・汚職スキャンダルが発覚。この余波で出資先の造船所が経営危機に陥り、2015年3月期は債務保証の損失引当金など290億円を特別損失として計上した。今期とはその要因が異なるとはいえ、同社にとって海洋資源関連はまさに「鬼門」となってしまった。

投資家からの信頼を毀損

現在は海洋構造物の新規受注を中止し、手持ち工事の完遂や愛知工場のテコ入れに注力している。「短期間での度重なる下方修正は、資本市場の信頼を毀損した深刻な事態と受け止めている」(寺井一郎・代表取締役副社長)と、不退転の構えだ。今回の修正見通しは想定されるリスクも含めて慎重に見積もった金額とのことで、3度目の下方修正はなんとしても避けたいところだろう。

2度目の下方修正を発表した翌22日の株式市場では、IHI株は前日比11%安となり、その後の株価の戻りも鈍い。生産現場の混乱は「完全に終息していない」(同)だけに、これで悪材料が出尽くしたのかどうか、投資家の間ではまだ疑心暗鬼のようだ。

IHIは航空エンジンやターボチャージャーなど好調事業を抱えているにもかかわらず、前期、今期とも海洋構造物が足を引っ張ってしまった。今後は、2期連続で痛い思いをした海洋構造物事業の見直しも迫られそうだ。 

山本 直樹 東洋経済 記者

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やまもと なおき / Naoki Yamamoto

海運などの業界を担当

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