60年代~70年代名画の香りがプンプン漂『砂丘』は、ニューシネマの代表的な一作として、また、ピンク・フロイドやグレイトフル・デッドが音楽を担当(ピンク・フロイドの未発表曲4曲が聴ける人類のお宝盤『砂丘/完全盤』は、絶対オススメ!)した注目度の高い作品として、1996年にはリバイバル・レイトショーが行われ、(未見だった)若者たちに熱狂的な支持を得ていた。
だが本作はMAフリークの方々からの評判は、例によってあまり芳しくないようだ。彼らにとってはハリウッド資本で撮られた作品というだけで面白くない。しかもテーマが当時アメリカのニュース・ネタの中心であった大学紛争となればなおさらだ。巨匠がそのような俗なテーマでなぜ撮ったのか? いかにもアメリカ~若者に迎合したようなテーマに反発を覚えるということなのだろうが……。
60年代の後期。黒人差別が叫ばれ、ベトナム反戦運動は激化し、それらもろもろが火種となり反体制紛争の嵐が吹き荒れていた南カリフォルニアのある大学。一学生に過ぎなかったマーク・フレチェットは、眼前で撃たれた警官殺しの容疑者として追われる身となる。あてのない逃亡を続ける最中、まんまと(自家用)セスナ機に乗り込んだマークは、砂漠地帯へと向う……。
そして衝撃のラスト。あらゆる角度から繰り返し映し出されるレストハウスの大爆破シーン(冷蔵庫やテレビなどの爆発が超スローモーションで映し出される)は、アメリカの物質文明に対する批判を含ませたようにも解釈できる。
まあ、本作を評論家風(苦笑)に言ってしまえば、「ヨーロッパで“愛の不毛”を説いてきたアントニオーニがアメリカに渡り、今度は病める現代アメリカの“不毛”を、砂丘というキャンバスに大胆に描いて見せた問題作」といったところか。
(文:たかみひろし/音楽・映像プロデューサー)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら