(第42回)公的主体の介入は産業改革を阻害する

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公的主体による産業の方向付けは失敗する

前号のこの連載で述べたように、改革を主導するのは市場であり、政治や行政はそれに抵抗する。右の雇用調整助成金はその典型例だが、エルピーダメモリに対する公的資金のようなケースもある。

積極的に変化に抵抗するのでなくても、公的施策が市場が示した方向付けを歪め、結果的に失敗に至るケースも多い。

週刊誌『AERA』(12年3月26日号)では、地方公共団体が補助金を支出して企業誘致を行ったが、わずか数年しか操業せずに撤退したため、当初目論んだ地域活性化効果が実現しなかった例を紹介している。

パナソニックが兵庫県尼崎市に建設したプラズマ・ディスプレー・パネル製造の新鋭工場に対して、兵庫県は設備投資額の3%相当を補助金として交付する制度を設け、145億円の補助金交付を決めた。しかし、第1工場は稼働わずか6年で操業停止となり、第3工場は操業わずか2年余で操業停止となった。

三重県亀山市に新工場を建設したシャープに対しても、三重県や亀山市が合計135億円の奨励金支出を決めた。しかし、亀山第1工場は稼働後5年で操業を停止し、生産設備を中国の企業に売却した。シャープが大阪府堺市に建設した液晶工場に対し、大阪府が150億円の補助金交付を決めた。しかし、生産は半減されている。

いずれの場合も、液晶事業やプラズマ事業の一時的な勢いを見て、地方公共団体が幻惑されたのだ。シャープの亀山工場建設決定にあたっては、他の自治体も考慮して秤にかけ、好条件を引き出した可能性があるとも言われる。これらのケースについて、地方公共団体は、補助金の返還を求める試みを始めている。

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