前回述べたように、中国の経済改革では、国有企業の整理が重要な課題だった。1970年代までの計画経済の時代には、工業生産のほとんどが国営企業によって行われていたわけだから、その整理はきわめて困難な過程であった。
まず第一に、国営企業が株式会社化され、国有企業となった。つまり、所有と経営が分離されたわけだ。計画経済時代における国営企業は、政府の指令を執行する機関にすぎなかった。利益をすべて上納するかわりに損失は補填されるため、生産性を向上させるインセンティブがなかった。それに対し、国有企業は経営権を持つ独立組織であり、国は出資の範囲内で利益を得、責任を負う。
つぎのステップは、これを民営化することである。これは、90年代半ば頃から、「抓大放小」(大をつかまえ小を放す)という方針に従って行われた。つまり、基幹産業の大企業は国家が所有するが、中小企業は民営化するという方針だ。
中小国有企業の民営化は、主としてMBO(経営者が自社を買収して独立すること)で行われた。これは、直接的な市場メカニズムの活用だ。
大型国有企業についても、政府は90年代後半以降、上場を推進した。そして、98年に、朱鎔基首相(当時)が経営不振の国有企業の破綻処理と、レイオフを通じた大胆な人員削減を実施した。
90年代末には、国有商業銀行の不良債権が深刻な問題だったが、不良債権が蓄積された大きな原因は、国有商業銀行が国有企業への資金供給の責任を負っており、そして国有企業が非効率的だったことにある。政府はこの問題に対処するため、国有商業銀行に公的資金を注入し、AMC(金融資産管理公司)を4社設立して不良債権を買い取り、処理した。