(第42回)公的主体の介入は産業改革を阻害する

(第42回)公的主体の介入は産業改革を阻害する

前回、雇用調整助成金の申請数が人口に対して比較的高い地域は、製造業の比率が高い地域と重なっていることを見た。つまり、この助成金は、すべての産業を均等に補助するものではなく、主として製造業の雇用減少に対処するためのものである。

しかも、前向きの施策ではなく、企業が過剰雇用を抱えることを可能とするものだ。このため、産業構造の転換を妨げる結果となっている。このことを、データで確かめておこう。

図は、2007年から10年にかけての製造業の出荷額の減少率が15%を超える県を赤で示したものだ。この図においても、これまで示した図と同様、愛知・静岡から中部日本を経て北陸に至り、そこから東北の一部に至る地域が赤で浮かび上がる。自動車産業とそのサプライチェーンが経済危機によって打撃を受けた地域だ(ただし、この図においては、東京、奈良、京都、鳥取、島根、高知など、これまでの図では赤にならなかった都府県も赤になっている)。

減少率は全国平均で14・1%だが、中部地方には、愛知19・5%、静岡18・6%、長野19・8%など、20%近い比率となる県が並ぶ。経済危機が自動車産業を直撃した様がよく分かる。

ところが、県別の失業率を見ると、これらの地域の失業率は、かなり低い。労働力調査の参考資料、都道府県別就業者(モデル推計値)によると、10年における失業率は、愛知4・3%、静岡4・0%、長野4・0%などとなっており、全国平均の5・1%よりかなり低くなっている。

出荷額の減少率が全国平均を上回れば、雇用の調整は全国平均より厳しく行われて当然である。それにもかかわらず失業率が全国平均より低いのは、雇用調整助成金が過剰雇用を支えているからだ。


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