90年代に、アメリカもイギリスも経済構造が大きく変わった。それだけでなく、中国も変わったのだ。それを通じて、現代の中国は、計画経済時代の中国とは大きく異なる経済構造を持つことになった。それゆえに高度成長が可能になったのだ。
しかし、この間に、日本だけが変わらなかった。だから日本が衰退したのだ。われわれは、いま、他国がどのように経済改革を実施したかを真剣に検討し、学ぶべきだ。
市場の圧力が経済を変える
改革の基本は、市場の競争原理を使ったことである。
イギリスでは、金融部門での規制緩和(ビッグバン)が行われ、これによって金融がイギリスの主要産業になった。この過程で、伝統的なイギリスの金融機関であるマーチャント・バンクは、一掃された。アメリカでも規制緩和が行われた。たとえばエアラインの規制緩和によって、航空業界は大きく変貌した。
マーケットは条件変化への対応を求める。日本では、それを政策が抑えたのだ。とくに、金融緩和と円安政策によって、旧来型の輸出産業を延命させた。このため、産業構造が世界経済の変化に対応して変わることがなかったのだ。
中国の国有企業改革においても、消費財部門の自由化が、間接的に大きな役割を果たしたことに注目したい。この部門は、所有権の自由度(外国企業の出資の自由度)においても、また製品市場の自由度(製品製造と販売における政府の規制からの自由度)においても、大きく進展した。それは、中国政府がこの分野を戦略的に重要と見なさなかったからだが、結果的に経済全体の活性化に大きな役割を果たした。