第一に、国有企業は、外資や民営企業と競争させられることになり、その非効率性が明白になった。国有企業の整理は、強力な既得権益との戦いだったはずである。それを切り捨てるためには、恣意的でない客観的な評価基準が必要だ。そのために市場が用いられたわけである。
第二に、この分野に多数の民間企業が誕生し、国有企業から放出された労働力を雇用した。そのため、社会不安を起こさずに国有企業の整理を進めることができた。改革を進めるためには古い産業や企業を整理することが不可欠だが、それによって大量の失業が発生する。雇用を創出する新しい成長産業が存在しないと、古い部門の整理はできない。これは、日本で産業構造の改革を進めるにあたって、大いに参考になる点だ。
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)
(週刊東洋経済2012年4月14日号)
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