今のSNSは、勧善懲悪のわかりやすい物語に流れがちです。ハリウッドの英雄ものに登場するような「悪人」がいて、それを叩けばハッピーになると思い込んでいる。
でも、世の中はそんなに単純ではありません。あらゆるものはバランスであるというのが、『全人類の教養大全』のコンセプトの1つでもあります。
日本人が知らない「本当に重要なこと」
バランス感覚を身につけるための知識と教養が必要だということになりますが、本書の世界観もまた、それが正しいかどうかは人によって変わります。
善悪で分ける世界観も存在するからです。ゾロアスター教や、イスラム教がその例です。ジハード(聖戦)は、善と悪に分かれて、悪と戦うことがミッションですから。
本書は、そのような絶対的な考え方を認めつつも、それだけでは世界が回らなくなっているので、両方のバランスの中で考えるべきだということを書いています。
体系的な教養と世界観を培い、バランス感覚を養うなら、古典を読むことに行きつくと僕は思います。
とは言え、予備知識なしにプラトンを読んでも難しい。その点、本書は、世界に点在する「知」を流れとして整理し、全体を展望させてくれる貴重な内容です。
流れを知ってから読めば、プラトンの絶対主義やニーチェの懐疑主義がよくわかります。アートでも、なぜ印象派が19世紀に驚かれたのかがわかるでしょう。
興味を持って芋づる式に本を読んでいくことは、とても大事なことだと思います。本は、その書き手の世界観を知って自分のものにできるというものです。
自分の世界観と、別の世界観とを擦り合わせて考える。いろんな本を読むことによって、自分の世界観を少しずつ構築していく作業が必要でしょう。
(構成:泉美木蘭)
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