政治は、常にトレードオフが起きるもので、「正しさ」は存在しないということを、マスコミも我々国民も理解するべきだと思います。
日本の政治に決定的に欠けている「対立軸」
本書では、政治における保守とリベラルの分け方がアメリカ式になっています。アメリカでは、自由な市場を大事にするのが保守で、政府が介入して分配するのがリベラルですが、日本はまったく違います。
自民党と社会党が対立していた55年体制の名残があり、自民党は自由な市場に合わせて企業活動を行うことを推進しつつも、同時に、都市部や大企業から集めた税金を、インフラ整備の形で地方に還流するという分配政策をやりました。
しかも、高度経済成長で経済はどんどんよくなっていき、「分配か市場か」の対立軸が生まれなかった。その結果、「核を持ち込むか否か」「憲法を守るか否か」ということをめぐって議論が進んでいったのです。
ところが、冷戦が終了してそのような争点も浮上しなくなり、何を議論していいのかわからなくなった。そこから時代が進み、たとえば第2次安倍政権のときには「安倍さんが好きか嫌いか」という話になってしまったわけです。
ただ世界的に見ると、「分配か市場か」は大きな争点です。特にアメリカは、富の集中が深刻です。日本も富裕層が増えているとはいわれますが、経営者の年収は、どんなに高くても数億円から10数億円ぐらい。一方、アメリカの大企業のCEOは、年俸100億円というレベルです。
トランプ大統領は、白人労働者の味方だと言って当選したのに、テック企業の社長と仲よくしているのだから矛盾していますが、議論の根幹には「分配か市場か」の対立があるのです。
トランプ大統領の問題を考えるためにも、何をもって支持されているのかを知り、そういう世界観の対立があることを知るというのはとても重要ですね。
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