映画【国宝】に感化され、10年ぶりに《歌舞伎鑑賞》したら凄すぎた! 歌舞伎座で“市川團十郎”の舞に酔いしれた「最高の平日」を徹底ルポ

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この日の会場は、やはり年配層が中心だったが、2〜3人ほどの20代の女性グループの姿も目立っていた。

そんななかに、1人で鑑賞する学生らしき若者がちらほら見受けられる。着物を着た女性来場者も多く、誰もが演目とともに歌舞伎座で過ごす時間を楽しんでいた。

歌舞伎の生の舞台には、役者の衣装、化粧、表情から、舞台の大道具、細かな装飾までを含めて、すべてに連綿と受け継がれる伝統がある。その舞台からは、唄や三味線、笛、太鼓など囃子、ツケ打ちが響き、演じる役者の謡もセリフも息遣いも、空気を震わせて伝わってくる。

歌舞伎演劇場を訪れれば、それらすべてが一体となった芸術であり、日本の伝統芸能である演劇を肌で感じることができる。それが得も言われぬ貴重な体験であることを、今回の観劇から改めて感じた。

横浜流星
会場には若者の姿も見受けられた。映画『国宝』ヒットの影響もあるのだろうか。写真は上方歌舞伎の名門の御曹司・俊介を演じた横浜流星(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

映画と演劇が歌舞伎ファンを増やす

波乱万丈の王道の人間ドラマ
波乱万丈の王道の人間ドラマもしっかり描いている映画『国宝』(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

映画『国宝』には、歌舞伎を題材にした映像作品ならではのよさがあり、力強く放たれるメッセージがある。

一方、歌舞伎演劇には、生の舞台でしか得られない体験があり、学びがある。かたやエンターテインメントであり、かたや伝統芸能の演芸だが、それぞれの特徴がお互いを補完する。

歌舞伎演劇を堪能し、心を打たれると、もう一度映画を観たくなる。映画を観ながら、歌舞伎演目のシーンでは、囃子や掛け声などの音をはじめ、観客の熱気など歌舞伎座の空気がよみがえり、すべての演目が奥行きをともなって立体的に迫ってくるだろう。人間ドラマを含めた物語そのものの見え方も違ってくるに違いない。

一方、映画の後に演劇に行けば、映画で描かれた芸に打ち込む稽古の様子や芸の道に人生をかける彼らの姿、そこにある熱い思いなどの舞台裏が思い浮かび、目の前の役者と重なる。伝統芸能の世界に身を置く彼ら一人ひとりの人生にまで思いを馳せながら観劇することで、感じられることがあるだろう。

それは、鑑賞者の人生を豊かにする。一方、歌舞伎の世界にとってはファンを開拓する理想的なリンクになる。いままさにそこを入り口に歌舞伎ファンが増えつつある。さらに大きな社会現象的なムーブメントになっていくことが期待される。

【もっと読む】吉沢亮主演『国宝』大ヒットの背景に“歌舞伎ファン”の圧倒的な支持 「上映3時間」「難解なテーマ」ながら、なぜ若者にも支持されるのか? では、上半期を代表する一大ムーブメントになっている映画『国宝』について、映画に詳しいライターの武井保之氏が詳細に解説している。
武井 保之 ライター

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たけい・やすゆき / Takei Yasuyuki

日本およびハリウッドの映画シーン、動画配信サービスの動向など映像メディアとコンテンツのトレンドを主に執筆。エンタテインメントビジネスのほか、映画、テレビドラマ、バラエティ、お笑い、音楽などに関するスタッフ、演者への取材・執筆も行う。韓国ドラマ・映画・K-POPなど韓国コンテンツにも注目している。音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク系専門誌などの編集者を経て、フリーランスとして活動中。

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