地方議員こそ情報公開請求を――議会での質疑を活性化し、行政監視機能を高めるための活用法とは

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新潟県が筆者に公開した、東京電力ホールディングスとの協議資料(筆者提供)
情報公開請求を武器に調査報道を続けてきた筆者は、「地方議員こそ情報公開請求の担い手であるべき」と主張する。行政監視機能を高め、社会を変えるきっかけになるという。

日本の役所は中央省庁、地方自治体を問わず、決定した内容や方針だけを公表し、そこに至るまでの政策プロセスをほとんど明らかにしない傾向がある。私が20年近く調査報道を続けている原子力行政のような分野はなおさら秘匿性が高い。そんな隠された政策プロセスを解明するため、私は公表されている情報から手がかりを探し出し、非公開の会議や調査に狙いを定める情報公開請求を続けてきた。

これまでの経験を基に効果的な請求方法を紹介する『情報公開が社会を変える──調査報道記者の公文書道』(ちくま新書)を2023年11月に刊行したところ、「わが街の怪しい事業を解明したい」という地方議員たちから〝助太刀〟の依頼が届いた。

議員本人とコアな支持者に集まってもらい、一緒に解明の道筋を考える「情報公開ワークショップ」を開催する中で、地方議員が情報公開請求の担い手になることで議会質問が活性化し、行政監視機能が高まることを確信できた。

止められなかった不正

ある日、あなたの住む街で突如として市立中学校の建て替え計画が浮上した、としよう。「生徒数が増える見込みで、教室や給食設備が不足するから」(市教育委員会の担当者)というのがその理由だが、何となく腑に落ちない。あの川沿いの地区は確かにマンションの新築が相次いでいるが、「終の棲家」にする高齢者や投資用に購入した外国人が多く、子育て世帯はほとんどいない。

そこで、親しくする市議会議員に尋ねたところ、「市教委の担当者から説明を受けたが、将来の生徒数を推計したデータはないと言われた」とのことだった。データがない? それならなぜ「建て替えが必要」と言えるのか? あなたが疑問を呈したところ、市議は翌月の定例市議会で、「本当に建て替えは必要ですか」と質問してくれたものの、市長は「必要です」と答えただけで、水掛け論に終わってしまった。

それから2年後のある日、建て替え工事が進む中で、県警捜査2課が虚偽有印公文書作成容疑で市長を逮捕した。国から交付金を得るため将来の生徒数推計を水増しするよう、担当者に指示していたというのだ。工事を受注した建設会社にも捜索が入った。市長は辞職し贈収賄事件に発展しそうだ。市議は「不要な公共事業と闘った男」として市長選に立候補するという。彼は市議として職責を果たしたと言えるのか? あなたはがっかりして応援する気にもなれず、後援会も退会した。

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