自治体は何もしていないわけではない。警告シールを貼ったり、地域住民への聞き取り調査を行ったりし、ごみの取り下げが成功するケースもある。
しかし、地域の生活環境を維持していくには永続的には残置できず、一定期間が過ぎた後、またはすぐにでも、断腸の思いで回収していかざるを得ない。
作業員の頭を悩ませる処理困難物の実態
家庭ごみの中にも、運搬や破砕しにくいもの、処分の過程で引火する恐れのあるもの、感染する危険性があるもの、有害物質の発生などが伴うものがある。
技術的な側面や処理設備の整備状況等から自治体での適正処理が困難な廃棄物を「処理困難物」と言う。それらの中には作業員の安全を守るため、また環境保護などのため、処理について法律で定められていたり、環境省から手引き等が出されていたりするものもある。
こういった処理困難物は、集積所に出しても回収されないのだが、ごみの中に紛れていては作業員も気づかず回収してしまう。
たとえば、以下のようなものが処理困難物として、倉庫の奥の方に一時保管されていた。
塗料缶自体は不燃ごみであるが、缶の中に塗料やシンナーが残っていると車両火災や不燃処理センターでの火災の恐れがある。よって、塗料は使い切ってから、ごみに出すのが原則である。
どうしても使い切れない残存塗料は新聞紙や布切れ等に塗り広げて乾燥させたのち、可燃ごみとして排出するという手法がある。
これらの塗料は、最近の「DIY」の流行りからか、家庭で利用した残りを排出していると考えられる。しかし中にはホームセンターでは販売していないような塗料等も見受けられた。
事業で利用したものを家庭ごみのように見せかけて排出したのではないかと推察され、排出者の悪意が感じられた。

医薬品、試薬、化学薬品、農薬類については、種類や濃度によっては特別管理産業廃棄物となる。産業廃棄物は排出事業者に処分の責任があるため、原則として地方自治体では収集しない。
基準値を超えた有害物質を含む薬品類は、下水道への排出は禁止されている。そのため事業者は都道府県知事の許可を受けた処理業者に依頼し、廃棄物処理法や関連する省令で定められた基準に従って処理する。
そもそも自治体は、薬品類が家庭ごみとして排出されるとは想定していない。しかし、不燃ごみの日に中身が入ったままで出されていることがある。
結果、正体がよくわからない薬品は清掃事業所で手が付けられず、処理には費用がかかるため、倉庫の隅に残置しておくしかない。
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