「SNSによる小党分立が加速したら」佐藤優と舛添要一が予測《7月の参院選》後の永田町。「無所属と政党公認では雲泥の差」経験者語る政党のパワー
石丸さんは市長時代から、ネット上の動画配信などSNSによる発信を積極的に展開して支持を集め、その議会とやりあう劇場型の舌鋒や、都知事選で彼の選挙カーを取り囲む群衆の模様は“石丸現象”とまで呼ばれました。
そうした勢いからか、2025年1月には「再生の道」という地域政党の設立を発表し、次の都議会議員選挙に42人の候補者を立てるということで、注目の的です。
(編集部注:本稿の内容は書籍刊行時点です。2025年6月22日に投開票された東京都議選では、「再生の道」からは42人が立候補しましたが、全員が落選し、議席の獲得はなりませんでした。)
佐藤さんが言われるように、SNSというツールは使い方次第で選挙での集票を後押しします。同時に、クラウドファンディングの時代ですから政治資金も集めやすくなる。
なぜこうした“現象”が出来したのでしょうか。
私は、昔の里山のあるような村落共同体が消えたからだと考えています。人間がアトム化(原子化)されて孤立し、他者との関係性が希薄になった現代において、都会に住む人々は、どうすれば自分たちの共同体(コミュニティ)を形成できるか思いあぐねている。そこをSNSがとらえた。
たとえば「ネットを見ていたら、石丸というおもしろい若手政治家が出てきた。銀行員出身で、議会と喧嘩して田舎の年寄り議員を論破しているぞ。今日、渋谷のハチ公前に石丸が来るそうだから、行ってみよう。
そして石丸の演説をスマホでライブ配信しよう」と、動画がネット上にアップされると、コメント欄に「石丸伸二の街頭演説は良かったよ」「次はどこでやるのですか」などと書き込まれ、一気に拡散します。ここに共同体意識が生まれるのです。つまり、SNSが昔の村落共同体の役割を果たすようになったのです。
ただし、ネットの力だけで選挙運動ができるわけではありません。私は1999年から政治活動をして、2010年四月には、「新党改革(旧・改革クラブ)」という政党を立ち上げました。その経験から言えるのは、地方でも全国でも実際に組織を作って活動するには多大な困難がともなうことです。
まず立候補したら、選挙事務所を構えなければなりません。次に選管(選挙管理委員会)の事務局に行って、選挙事務所の標札、腕章、個人演説会用立札など、いわゆる「選挙の7つ道具」を交付してもらう必要があります。そして街宣活動のために、ワンボックスやミニバンをレンタルします。それには供託金をはじめ、資金も人手もかかるわけです。
無所属と政党公認では格段の差がある
私は1999年の東京都知事選(4月11日投開票)に無所属で出馬しましたが、選挙ポスターは仲間がボランティアで貼ってくれました。しかし伊豆諸島にポツンとある掲示板まで、船に乗って貼りに行くほどの動員力はなかった。
ところが、2001年に自民党から国政に立候補した時には(第19回参議院議員通常選挙。7月29日投開票)、自民党の各支部がわずか半日で全部やってくれました。このように、無所属と政党公認では格段の差がある。選挙運動全般をカバーできるような組織づくりは、それほど難しいということです。