また、保育園の先生が「もう少し様子を見ましょう」とおっしゃったのは、おそらく長年の経験に基づくものだと思われます。毎年何十人という子どもの発達を見ている先生方は、短期的な判断をせず、「その子なりの成長のリズム」を大切にしようとしてくれているはずです。
その不安は本当に“今ここにある問題”なのか
もちろん、注意が必要なケースもあります。たとえば、周囲とのコミュニケーションを一切拒否している、他の子への極端な攻撃性がある、本人が「話せないこと」を深刻に悩んでいるなどの場合は、専門家の支援を検討すべきかもしれません。しかし、今回のように「ママ」「パパ」「いや」といった言葉で意思表示ができているなら、すでに“つながろうとする力”は芽生えています。
SNSや育児本、ママ友の会話などから「理想の子育て像」がどんどん情報として入ってきます。まるで、皆が順調に発達し、何の問題もないように見えてしまうのです。でも、それはほんの一場面を切り取った“映像”に過ぎません。誰もが悩みながら、迷いながら、それでも我が子のことを一生懸命に考えている。それが現実の子育てです。
「完璧な親であらねば」「わが子を完璧に育てねば」という思い込みこそが、親を追い詰める最大の罠です。山本さんが眠れないほど心配しているお気持ちは痛いほどわかりますが、その不安が本当に“今ここにある問題”なのか、もう一度立ち止まって見つめ直してみてください。
子育てとは「今」を生きる連続です。未来を過度に心配しすぎて、今日の親子の笑顔が曇ってしまうとしたら、それこそがもったいない話です。完璧な親である必要はありませんし、なる必要もありません。「今日も一日、無事に過ごせてよかった」と思える心持ちこそが、親にとっての最大の支えとなり、それが子どもにとっての最高の環境にもなるのです。

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