失業状態からネットフリックスと協業するまでに成長した台湾の制作会社、躍進する映画とドラマのエコシステムをプロデューサーに聞く

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次の被害者
ネットフリックスによって全世界に配信されたドラマ『次の被害者』。台湾ドラマ史上最高額の制作費がネットフリックスによって用意された(写真:瀚草影視)

2017年以降にネットフリックスが台湾に参入してきた際、私たちはすでに「物語を語る共通言語」を備えていました。『紅い服の少女』や『麻醉風暴』で培ったジャンル作品の経験が評価され、『誰是被害者(次の被害者)』の企画が注目されました。最初の協業は驚くほどスムーズで、ネットフリックス側も資金や制作ノウハウを惜しみなく提供してくれたおかげで、その後の国際合作にも生かすことができました。『次の被害者』では、社会に理解されない人々が、極端な手段で存在を訴えようとする姿を描き、コロナ禍の孤立した時代に強く共感を呼びました。

――台湾と日本の合作の現状や展望について聞かせてください。

私たちの作品ではありませんが、『青春18×2 君へと続く道』(監督:藤井道人/2024)は、台日合作映画の大きな成功例でした。台湾と日本は歴史的にも深いつながりがあり、物語の素材があります。

広がる「グローバルに考え、ローカルに語る」

ただし、制作手法や市場構造の違いから、台日合作はなかなかスムーズにいかないことも多く、過去にもホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督やエドワード・ヤン(楊德昌)監督などが日本から出資を受けた事例はありましたが、出資や支援にとどまっていました。

1980〜1990年代は国際的に開かれていた日本映画界も2000年代以降は内向き志向になりました。一方、台湾映画はハリウッド大作と並ぶ鑑賞料金で勝負せざるを得ない中、ローカルに根ざした感情に訴える『海角七号』のような作品が求められるようになります。

また台湾映画は中国との連携も試みられましたが思ったほどの成果は得られませんでした。代わってネットフリックスのような国際プラットフォーマーが2018年ごろから台湾に入ってきました。

彼らの持ち込んだ「グローバルに考え、ローカルに語る(Think globally, Act locally)」という発想は国際共同制作のハードルを下げ、台湾映像業界の新たな展開を後押ししました。現在、日本もグローバル市場への接続を模索している状況で、台湾は非常に相性の良いパートナーだと思います。『青春18×2』の成功も、台湾と日本がそれぞれ外に向かって開こうとしたタイミングで、物語・キャスティング・文化表現などすべてのバランスがうまく取れたからだと思います。

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