失業状態からネットフリックスと協業するまでに成長した台湾の制作会社、躍進する映画とドラマのエコシステムをプロデューサーに聞く

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――『麻醉風暴(英語タイトル:Wake Up)』という話題の医療ドラマを手掛けたのも、ちょうどその時期でした。

「麻酔風暴(ウェイクアップ)」
社会派の医療ドラマとして高い評価を得た「麻酔風暴(ウェイクアップ)」(写真:瀚草影視)

当時の台湾では商業的に成功を目指すなら「アイドルドラマを作るべき」と言われていました。でも私はその路線にあまり魅力を感じられなかったリアルな医療ドラマに挑戦しました。

当時はまだ医療や社会派のドラマは珍しく、『麻醉風暴』はその先駆けだったと思います。この作品は金鐘奨(台湾のエミー賞)で多くの賞を受賞し、『紅い服の少女』も中華圏を代表する映画賞である金馬奨でも話題になりました。こうして「グリーナー・グラス」も業界で一気に広く知られるようになりました。

成功の裏でおろそかにされた脚本や内容

――一方で、2015年から2018年にかけて中国資本の大規模な流入や台湾の俳優が中国人の役を演じる作品なども増え、台湾独自の特色が薄れていくのではと心配しました。業界の中から当時の状況をどう感じていましたか?

確かに中国との合作が増えていたのは事実ですが、それ以上に台湾内でも大きな動きがありました。2008年に大ヒットした『海角七号』は、台湾映画に約10年続く活性化のきっかけをもたらしました。2017年頃まで、俳優や音楽、監督、資金、市場すべてが良い方向に進み、台湾映画は一種のブームを迎えたのです。

当時はIT業界や投資ファンド、政府の文化政策からの支援金も相まって「映画は儲かる」との期待感が広がり、多くの資金が映画業界に流れ込みました。たとえば、豬哥亮さんの『雞排英雄』『大尾鱸鰻』などが春節映画としてヒットし、興行的には成功を収めました。

一方で、肝心の作品内容や脚本は二の次という風潮もあり、そうした時代に合っていなかったから、私たちの『阿嬤的夢中情人』も失敗したのだと思います。皮肉な話ですが、だからこそ私は「映画は簡単に成功できる」という周囲の人々に流されず、地に足をつけて脚本の質を高める時間を持てたと思います。

――その後、ネットフリックスとの共同制作が本格化しました。

特にアメリカの「ジャンル型ストーリーテリング」に学び、いかに台湾の文化や個性と融合させるかを模索した経験が、大きな基盤となっています。

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