トランプ大統領が相互関税を発表した直後、金融市場は直ちにリスクオフとなり、グローバルな株価暴落が生じた。当初は強気だったトランプ大統領だが、安全資産であるアメリカ国債の金利が急騰したことを受けて、態度を改めざるをえなくなる。日本で市場が開いている時間帯に金利が急騰したため、日本の金融機関がアメリカ国債を売ったという観測も流れた。
その後、実際にアメリカ国債を売ったのは中国の投資家ではないかという観測が強まった。直後に発表されたアメリカ財務省の統計で、2月時点では日本に次いで2番目にアメリカ国債を保有していた中国が、3月にはイギリスに代わって3番手に順位を落としたことも、アメリカ国債を売ったのは実は中国だという見方を強める材料になった。
とはいえ、相互関税の詳細が公表されたのは4月3日だから、2月と3月の動きをもって、中国がアメリカ国債を売ったと判断することはできない。しかし、中国はやろうと思えばアメリカ国債を売却できるし、市場でもその可能性が意識されている。もしそうなれば、アメリカの国債市場は大混乱となり、最悪のケースではアメリカは自己成就的な金融危機に陥る。
こうした危機感が急速に高まったからこそ、スコット・ベッセント財務長官が相互関税の交渉のフロントに立つようになり、中国の何立峰副首相との間で交渉を取りまとめたのだろう。アメリカにとって国債問題がアキレス腱であることを知らしめる事態となったわけだが、一方EUの場合も、交渉の過程でこのカードを切る可能性が意識される。
束ねると多額のアメリカ国債を保有しているEU
アメリカ財務省の統計によると、3月時点でアメリカ国債を最も保有するEU加盟国はルクセンブルクで、その額は4124億ドルと日本(1兆1308億ドル)の半分にも満たない。またルクセンブルクの場合は、投資信託が籍を置く中心地であることから、ルクセンブルクで記帳され、運用されていても、実際はEU以外のマネーであるケースも数多い。
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