そしてもうひとつ、真奈さんはお母さんとの関係の中にも気づきを得ます。
「母と私は似ています。母も不安症で過干渉で『他人に迷惑をかけるな』という人です。私はそんな母の影響を強く受けたんでしょうね。私が息子にしてきた言動は母と同じでした。そして、父は私が母に怒られたときもただやさしく見守ってくれていたんですよね。そのときに、そうか、私は父がしてくれていたようにただ息子を見守ればいいんだと思ったんです」
お父さんの死に「おじいちゃん子だった」という息子さんも何かを感じ取ったようです。
「父が亡くなったあとにちょうど学校の三者面談があったんですが、そのときに息子が『大学進学をめざす』と言ったんです。私はその場で初めて聞きました」
行きたい大学と学部があるという息子さんは、今、受験勉強中。「予備校や塾には行かなくていい」という息子さんの希望で、以前の高校で使っていた教科書を買って独学で勉強し、いつまでにこの単元を終わらせようと自分で勉強の計画もたてているそうです。
「私はこれまで子どもの教育に口を出し過ぎていたので、今はなにも言わないようにしています。聞きかじったことを言うと間違ったアドバイスになりますし」
そう言ってほほ笑む真奈さんは、心から息子さんのことを見守る穏やかなお母さんの表情をしています。
これまでの価値観を少しずつ変えていった日々
このように真奈さんにとってお父さんの死は大きな転機でした。その傍ら、真奈さんはある時期から自分のことを内観する日々を過ごしていたようです。
「アドラー心理学で『課題の分離』を知りました。私と息子はいっしょに生活をしているけれど、歩んでいく道は別。私には私の人生の課題があり、息子には息子の課題がある。それに口をはさむのは、彼が自分で乗り越えようとしている課題を私が潰していることになるとわかりました。
もうひとつは『あるのは今だけ』という言葉。大事なのは今なんですよね。息子が不登校になってから、私は過去への後悔と未来への不安をずっと抱えていました。でも、今の彼を見ればいいんですよね」
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