「何でもSlackで?」、チャット依存の部下と"リアル重視"の上司がすれ違う理由。どうすればリアルコミュニケーションの重要性は伝わるのか

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とりわけパンデミック中に社会人生活をスタートした若者は、リモート環境での仕事はごく自然なものだ。対面のコミュニケーションスキルをそもそも身につける機会が少なかった、という側面もある。

前述した部下の場合、前職のIT企業では社長でさえリモートワークが当たり前の環境。「電話は相手の時間を奪う行為だ」「短文で用件を伝えられるようにしなさい」と教え込まれていた。

彼らにとってSlackは、仕事を効率化する代わりに、考える時間を与えてくれる貴重な手段でもある。感情的になったときも、すぐに返答する必要がないのも、電話や対面コミュニケーションに比べてメリットを感じる点だ。

便利なツールには落とし穴もある

Slackのようなビジネスチャットツールは確かに使い勝手がいい、と私も感じている。しかし過度に依存することの弊害も実感している。

チャットを使ったテキストコミュニケーションで最も問題となるのは、感情やニュアンスの伝達が困難で、誤解を招きやすいからだ。「了解です」という一言でも、相手は「短気になっているのでは?」「何か不満があるのでは?」と勘ぐってしまう。

あるマネジャーは、部下にSlackで「お疲れ様です」と送っただけで、「冷たい」と受け取られた経験がある。文末に「。」の句点をつけたメッセージを若手は威圧的に感じるというマルハラ(マルハラスメント)を恐れるベテラン社員も少なくない。

さらにトラブルや行き違いが起きたときの対応も難しい。テキストでは微妙なニュアンスが伝わりにくく、誤解がさらなる誤解を生む可能性がある。

著名な心理学者アルバート・メラビアンの研究では、コミュニケーションの印象における言語情報の影響はわずか7%。残りの55%は表情、38%は声のトーンが占めている。

メラビアンの研究だけではない。ジェスチャーや表情などの「非言語情報」が、言語情報の理解や信頼性判断に大きく影響を与えることは、複数の研究で示されている。つまりコミュニケーションで重要なのは「言語情報」(話の内容)よりも「非言語情報」なのだ。

Slackなどを使ったテキストコミュニケーションでは、この非言語情報が伝わらない。だからこそリアルで会うことは価値があるのだ。とりわけ相手との関係ができていない段階では、少し「無駄」な時間があったほうがいい。

たとえば、お客様のオフィスを訪問したとき、受付からミーティングルームまでの移動時間は一見「無駄」に思える。しかし、この「間」こそが重要なときもある。

エレベーターで一緒になったとき、廊下を歩きながら交わす何気ない会話。「最近、雨が多いですね」「御社のホームページ、刷新されましたね」といった挨拶から始まって、思わぬ共通点が見つかることもある。

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