「刑務所を出ても再犯するかも」「GPSデバイスの装着を」愛する子がわいせつ被害…「服役後も加害者を追いかける」と決意した“親の執念”
自分のことを知らない土地で、名前を変えて生活する男性に、再犯の可能性を強く感じた谷崎さんは、賠償を求めて、支払いがされるまで追いかけ続けるというやり方を選択した。
損害賠償命令制度の強制執行に必要な場合は、相手の住民票も請求可能だ。
また「被害者通知制度」を使って、出所後の男性のだいたいの居場所を知ることもできる。
現行の懲役刑(および禁錮刑)が廃止され、今年6月からは「拘禁刑」に一元化される。「懲らしめ」から「立ち直りの更生」に向かって刑罰は大きく変わろうとしているところだ。
一方で、教育現場など子どもと接する仕事に就く人に、性犯罪歴がないかを確認(照会)する制度「日本版DBS」が来年にも始まる。こども家庭庁は導入に向けて、年内のガイドライン策定を目指す。
罪を犯した人に対する支援と規制のバランスをどう考えればよいのか。
谷崎さんは、照会の範囲が事業者で限定される日本版DBSの不完全さを指摘する。
「男性は『歌い手』として音楽配信アプリでフォロワーを相手に活動していました。学校や保育園に限らず、子どもとつながる機会はいくらでもあります」と眉をひそめる。
表に出にくい少年間の性犯罪事件
再犯率の高さが指摘される性犯罪者の更生は課題であり、刑務所での矯正プログラムも実施されている。
とはいえ、すでに被害にあってしまった谷崎さんは、元受刑者の自制に頼るようなやり方では不十分だと強調し、新たな被害を防ぐため、次のような取り組みを進めてほしいと語る。
「服役中と出所後の矯正プログラムの実施だけでなく、出所後にはGPS(全地球測位システム)デバイスを装着させるほか、必要に応じて氏名と住所を公開することも必要だと考えます。被害者支援も広がってきていますが、あまりに加害者の保護が厚いと感じます」
そして、性的な知識のない未熟な年少者に対する性犯罪は、加害者が未成年だとしても、実名で報道してほしいとメディアにも要望する。
「青少年の未来もあるし、加害者の更生も重要。しかし、子ども同士だったとしても、年齢差のある相手の性犯罪は危険です。息子と男性の年齢差も10歳以上ありました。子をもつ親としては犯罪者の名前を公開してほしい。
公開してくれたら、息子もほかの子も被害にあわなかったかもしれません。子ども相手の性犯罪は実名で報じてください。未来の犯罪者を減らすことになるとも思います」
被害者支援の活動に取り組む弁護士は「未成年から性加害を受けた人や家族のやりきれなさは、医療や福祉の支援が必要で責任能力を問われなかった人の事件に巻き込まれた被害者と同じものがある」と指摘する。