「一時は、もう移転してでも熟成豚骨を突き詰めたいと考えました。ですが、日々届く地域の方々の声に、正直メンタルが崩れそうな日々でした。泣きそうな朝もたくさんありました。そんな時、箕輪さんから言われた一言が響きました。
『まるちゃんの豚骨への執念はすごい。でも、魚を買いにきた家族が豚骨の匂いを感じたら……それは嫌がられる。そこは真摯に向き合うべきだ』。確かにその通りだと思いました」(丸山さん)
移転せず、今の物件でクサウマを続ける方法は?
現在、創業以来の最高益を上げていて、ファンも多くいる状況の中で、この中野の地でやれることをまずやるべきだと箕輪さんは助言した。ここから、移転せずに今の物件でクサウマを続ける方法を考え始める。
「原因は明確でした。豚骨を炊いている厨房のダクトが、通行人や隣接する焼肉屋さんの方向へ向いていたことです。僕たちはすぐに、3つの対応を検討しました。
ダクトを屋上に延ばす改修案と、フィルター付き排気設備の導入、そしてダクトの向きを変える工事の可能性を複数業者に相談しました。一つひとつ、真剣に調べ話を聞いて、対策を決めていきます」(丸山さん)
ダクトの問題はクサウマをやるにあたってはマスト事項だ。
丸山さんの修業先でもある高田馬場にある「博多ラーメン でぶちゃん」の店主・甲斐康太さんはこう話す。
「うちの場合はダクトを人通りのある道の方には向けず、裏に出しています。もしくはダクトを屋上まで延ばすのも一つの方法です。このどちらかをやらないと厳しいですが、しっかり対策をすれば大丈夫です。
そもそも、“豚骨ラーメン”という時点で貸してくれないケースが多いので、決められたところでしっかり対策をすることが大事ですね」(「でぶちゃん」甲斐店主)
工事が決まるまでの間は換気扇を切って、通りにニオイが出ないようにした。厨房の中が暑くて大変だそうだが、何とかこの形で営業を続けた。

家系ラーメンの「箕輪家ラーメン」はじんわりとしたオールドスタイルな美味しさに進化し、「塩豚骨ラーメン」は本場さながらの熟成臭と旨味を放つ一杯で素晴らしい仕上がりだ。
豚骨の炊き方を変えたことで、以前は46%まで上がっていた原価率問題も解決し、美味しさを進化させながら月に30万円のコストカットにもなった。
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