世耕氏招致でも"真相はますます闇の中"、「政治とカネ」問題の究明がちっとも進まない《構造的要因》

自民党・旧安倍派の裏金事件をめぐって4月21日に参議院予算委員会で実施された世耕弘成・前自民党参院幹事長の参考人招致。同派の政治資金パーティー収入の還流を再開したことについて世耕氏が改めて自身の関与を否定し、真相はますます闇の中となった。
この参考人招致では、旧安倍派の参院議員を束ね、同派の運営にも大きな影響力を持っていた世耕氏が、還流再開が決まったとされる2022年8月5日の「4幹部会合」の論議にどう関与したかが、最大の注目点だった。しかし世耕氏は、幹部会合での議論の詳細など核心部分には踏み込まず、「還流再開決定には関わっていない」との説明を繰り返した。
参考人招致での冒頭発言とそれを受けた質疑で、世耕氏は「元幹部の1人として、大変な責任を感じ、後悔している」などと、国民の政治不信を拡大させたことを改めて謝罪。その一方で、各党委員からの厳しい追及に対しては、昨年3月の参院政治倫理審査会と同様の見解を繰り返した。会合に同席したほかの3幹部の発言内容についても「正確な説明は困難」などと、具体的な言及や論評を避けた。
ハードルが高い塩谷・下村両氏の参考人招致
野党側は、世耕氏以外の塩谷立・元文部科学相、下村博文・元政調会長、西村康稔・元経済産業相の3氏について、衆議院予算委員会での参考人招致を要求していく方針だ。ただ、現職議員でない塩谷・下村両氏については「(現職議員以外は)過去に例がない」(衆院事務局)ことに加え、参考人招致は全会一致が慣例で、現職の衆院議員である西村氏も本人の承諾が前提となるため、実現へのハードルは極めて高い。
こうした状況も踏まえて、野党側は大型連休明けの対応協議において、「政治とカネ」をテーマとする衆院予算委集中審議を5月12日に開催し、石破茂首相に西村氏らの参考人招致を決断するよう迫る構えだ。
ただ、与野党が“国難”と位置づける「トランプ関税」に伴う物価高対策が国政の最優先課題となる中、野党陣営からは「裏金問題での国会運営の混乱は、国民の野党批判にもつながりかねない」(立憲民主党の国会対策幹部)という不安な声も聞こえる。
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