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もし撤回されても成長は戻らない…「トランプ関税」が招いた不確実性の決定的ダメージとは。日本はゼロ成長でアメリカ最大、世界にデフレ圧力

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物価においては、アメリカとその他地域で非対称的な効果を持つと考えられる。

アメリカでは輸入コストの上昇が、供給サイド起因のインフレ圧力となる。ただ、オックスフォード・エコノミクスでは、アメリカの物価(コアPCEデフレータ)は2025年半ばの前年比4.5%付近をピークに低下し、2026年には2%を割るとみている。

消費者が直面する最終製品において、関税の影響を受けるコスト部分はごく一部に過ぎず、また、関税コスト増は流通過程のマージン縮小で一部吸収される。加えて、アメリカでは、最終消費バスケットに占める輸入財のシェアも10%程度と小さい。

それ以外の国では、対抗措置や大規模な景気対策が取られない限り、総需要の減少を通じてデフレ圧力となる可能性が高い。足元で進行しているコモディティ価格の下落(これ自体、需要の世界的な減少を織り込んだ動きである)やドル安・他通貨高傾向もデフレ圧力となる。

ただし、実体経済への影響に比べ、物価への影響は不確実性が高く、アメリカ以外でもインフレ圧力が生じる可能性も否定できない。企業のサプライチェーンがグローバルに展開されている現在、製造のどの段階でボトルネックが生じるか事前に予想することは困難であるためだ。

仮に、コロナ禍で生じたようなサプライチェーンの混乱が生じれば、供給サイド主導の物価上昇が世界的に再燃する可能性もある。

例えば、現在、アメリカのサプライチェーンのストレス度合いは、全体から見ると高くないが、関税賦課前の駆け込み需要を受けて空運経由の輸入が急増するなど、局所的にはストレス要因の高まりも確認できる。

最もダメージが大きいのはアメリカ自身

今回のトランプ関税の影響を最も大きく受けると考えられるのは、ほかならぬアメリカ自体である。

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