それからしばらくして田中さんは、ある不登校支援機関の広告に目を留めます。
母:「そこには『短期で不登校を解決する』と書かれていました。その言葉に強く惹かれて問い合わせました。とにかく学校に行かせたかったんです」
その支援機関の説明によると、さまざまな方法で子どもの日常生活に約束事(制限)を設けることで学校に行くしかない状態をつくるのだとか。それを聞いたお母さんは「合理的な手法だな。頭がいいな」と感じたと言います。そうして支援機関を頼ることに決めました。
テレビ、スマホ、パソコンは禁止
ひとつめの約束事はデジタル規制です。テレビ、スマホ、パソコンは禁止。朝の10分だけ、友達とメッセージをやり取りすることが許されます。ほかには、「朝は7時に起きること」「食事は3食ともリビングで家族ととること」などの約束事が設けられ、学校に行けたら解除するという約束を交わすのだそうです。
母:「娘は何も言いませんでした。たぶんあきらめていたのだと思います。嫌だけれど学校に行けない自分が悪いから、そうされても仕方ないという思いだったのではないでしょうか」
娘さんはお父さんのパソコンを使って音楽を聴くこと、好きなサイトを見ることも禁止され、週に数回の習い事と塾に出かける以外は自分の部屋にこもり、頭からふとんをかぶってベッドで過ごしていたそうです。
もうひとつ、支援機関から提示された約束事に「1日たくさん褒めること」という項目がありました。
母:「なんでもいいのですが、娘がやってくれたことを褒めるんです。『ペットの世話をしてくれてありがとう』とか『手伝ってくれてありがとう』って。でも、もともとあまり自分のことを話さない子ですし、部屋で過ごす時間が多いので褒めることもなくなっていくんです。毎日、褒めることを絞り出すのが大変で…」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら