「教育虐待」が生んだ23歳女性の貧困、娘の人生を壊した《毒親一家》が背負う十字架のこの上ない重さ

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性虐待されている現実を知らない母親は、相変わらず優等生の長男とできない娘と比較して罵り続けている。母親は大学受験も諦めることなく、予備校と自宅学習を強いて介入を続けた。高校生になってからは、深夜かときに朝まで勉強をさせられた。

結局、偏差値は上がらなかった。母親に言われるがまま大学受験した。何校も受験させられたが、母親が「こんな大学、受験料の無駄」と文句を言っていた大学にだけ合格した。

「一校だけ合格したとき、母親はキレて暴れました。大学入試は確かネットで発表があってから、合格証書みたいなのが送られてくるのですが、『こんな大学恥ずかしい』『お兄ちゃんと血が繋がっているとは思えない』みたいなことを叫んでビリビリに破いていました。兄は相変わらず、夜中になると襲いにくる。もう、本当にこの家はダメだと思いました」

独りよがりの教育が生んだ絶望

母親は娘の学歴にこだわり続けて、物心がついてすぐに早期教育から中学受験、高校受験、大学受験と教育虐待を続けた。十数年間、母親は膨大な時間とお金を使って諦めなかったが、環奈さんはなにひとつ実現することができなかった。

「大学生になって、今までなんだったのだろうと思いました。あんなに勉強させられたのに全然できない、おかしいと思ったので病院に行ったら発達障害と診断されました。そして、大学1年の夏休みに家から逃げました。それから一度も帰っていません」

母親が高望みをした子どもが望まない中学受験、高校受験、大学受験――。膨大なお金と時間を使った長期間に及ぶ教育虐待の結果は、母娘関係の破綻と絶縁となった。

それだけでなく、溺愛した長男は妹への性暴力加害者となってしまっている。独りよがりに子どもの教育にのめり込んだことで、いくつもの取り返しのつかない絶望が生まれてしまった。

教育虐待を強いた母親は息子が鬼畜のような人物であること、娘から殺したいほど恨まれていることを知らない。

本連載では貧困や生活苦でお悩みの方からの情報をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
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中村 淳彦 ノンフィクションライター

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なかむら あつひこ / Atsuhiko Nakamura

貧困や介護、AV女優や風俗など、社会問題をフィールドワークに取材・執筆を続けるノンフィクションライター。現実を可視化するために、貧困、虐待、精神疾患、借金、自傷、人身売買など、さまざまな過酷な話に、ひたすら耳を傾け続けている。著書に『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)、『私、毒親に育てられました』(宝島社)、『同人AV女優』(祥伝社)、『パパ活女子』(幻冬舎)など多数。Xアカウント「@atu_nakamura」

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