「教育虐待」が生んだ23歳女性の貧困、娘の人生を壊した《毒親一家》が背負う十字架のこの上ない重さ

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母親は、教育は娘のためだと思い込んで前のめりとなった。その結果として母娘関係は修復しようのない破綻となり、娘は過度なストレスから端を発して障害や希死念慮に苦しみ、母親の希望や願望とは正反対の結果となってしまった。母娘関係は絶縁するまで悪化しているので、もう取り返しがつかない状態である。

環奈さんは中学受験の大手進学塾に通う小学生の後ろ姿を眺めて、自分が経験した教育虐待を思い出してメンタルが不安定になっている。中学受験には母親の狂気が必要と言われているが、一歩間違えれば、子どもや家庭が崩壊しかねないそんな行動に一歩を踏みだす母親が後を絶たない。

首都圏(1都3県)の中学受験者数は5万2400人(2024年首都圏模試センター調べ)と過去最多に近い人数で高止まりして、さらに子どもの自殺者数は過去最多と発表されている。つまり、少子化時代に出産した現在30代後半~40代前半の母親たちの狂気が必要と言われる教育熱は過熱し、それに比例して子どもの自殺が増えていることになる。悲惨な結末となる動機の1つとして、環奈さんが経験した親から過度な期待をぶつけられる教育虐待が挙げられるだろう。

現在、パートナーと東京の城北地区で暮らしているというので、その日の夜に会いに行った。環奈さんは母親と縁を切って離れても、その後の生活は苦労続きのようだ。

発達障害があるのでいくら活動しても就職が決まらない、マルチタスクができないのでアルバイトも続かない、パートナーも非正規労働者で固定費を支払うと、使えるお金が数万円しか残らない。パートナーができてからは夜の仕事には手を出していないので、経済的に苦しい状態は続いている。

「家は地獄、本当にツラい記憶しかない」

彼女が経験したのは母親からの教育&身体的虐待と、母親が溺愛する2歳上の兄からの性虐待である。嫌だった過去がフラッシュバックして、涙が止まらなくなる虐待とはいったいどのような経験か。近くのカラオケボックスに入ると、すぐに話が始まった。

カラオケボックスで過去を語ってくれた環奈さん(写真:編集部撮影)

「母に自分の人生とか生活をガチガチに決められてきました。塾に通う子どもだけではなく、中高生の制服を見ただけで記憶がフラッシュバックします。苦しくなったときに頭に浮かぶのは、私が勉強する姿を怒鳴りながら鬼のような表情でにらむ母の姿とか、徹底的にイジメられた中学生時代とか。死にたいなって気持ちになります」

母親のことが頭の中に蘇ると、おそろしくなって部屋の中で物を投げて暴れたり、街とか電車の中で奇声をあげたりしてしまう。

「もう、日常生活に支障を来しています。私、全然勉強ができなかったので、中学受験だけではなく、高校受験、大学受験とずっと続きました。母に勉強を徹底的にやられました。母に支配されての教育虐待みたいなことは、逃げ出す19歳のときまで続いた。家は地獄みたいなところで、学校でもイジメられたし、本当にツラい記憶しかありません」

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