「教育虐待」が生んだ23歳女性の貧困、娘の人生を壊した《毒親一家》が背負う十字架のこの上ない重さ

✎ 1〜 ✎ 55 ✎ 56 ✎ 57 ✎ 58
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

多くの親は中学受験する理由として「子どもの能力や可能性を広げたい」「将来の選択肢を広げたい」というが、一方で周囲に流されている、塾のマーケティングに乗せられている、見栄を張りたいみたいなこともある。

「私は受験をさせたかったのは、母の見栄だと思います。娘をいい学校に入れて、誰かに自慢したいように見えました。塾の授業は本当になにもわかりませんでした。わからないから退屈だけれども、母は『大手塾で頑張れば名門校に行ける』と張り切っているので従うしかありません。テストも模試も、なにもわからないのでずっと最下位です」

テストや模試の結果を見ると、母親の表情は怒りで曇る。「お前にいくら金をかけていると思っているの。親不孝者」と暴言を吐かれるようになって、物差しで叩くだけでなく、殴る蹴るの暴力も起こるようになった。暴力は打ちどころが悪いと、顔や体に紫色の痣ができる。

一方、2歳年上の兄はリトルリーグで活躍しながら、都内の名門中学校に合格した。母親は兄を誇りに思って溺愛していた。期待に応えてくれる自慢の長男であり、いつも「お前と違ってお兄ちゃんはすごい。私の自慢の息子」という話になった。

母親は長男の進学先を祖父母や親戚、友だちに言い回り、兄を立てるための比較対象として「娘と違って、息子は優秀」と、環奈さんは常にダメな対象として兄と比較された。

「いつも成績が悪くて、母の望む名門中学校は不可能みたいな結果が出る。そうすると、ブチ切れて私だけご飯を抜きとか。ご飯とゆかりを床にぶちまけて犬食いしろとか。怒られるので、手を使わないで食べます。そうすると母と兄が笑う。あははは、食べてるよって」

小学校6年から週4回の塾と家庭教師の掛け持ちとなった。自宅でも深夜近くまで勉強をさせられた。それでも偏差値は上がらなかった。2月、母親に言われるままにいくつかの中学校を受験して、すべて不合格となった。

「中学受験で落ちたことは、あまり激怒されなかった。高校受験で挽回しよう、みたいなことを言っていました。公立中学では母にテニス部に入ることと、塾に入ることを決められました。自分は吹奏楽部をやりたかったけど、全部母が決めるのでテニス部をやるしかありません」

何度も自死を考えた中学時代

中学校から本格的にイジメられている。部活でも、クラスでも、家に帰っても罵られ続けて「何度も自死を考えた」という。地獄のような日々となった。

「中学校のイジメは本当に酷くて、物を盗んだとか。アトピーだったのでばい菌とか。男子にも女子にも、泣くまで汚いとか言われました。最終的には同じクラスの人だけじゃなくて、全校生徒に広まって給食のカートで轢いてやるって追いまわされた。学校にいる全員にばい菌とか言われるのは、本当にツラくてツラくて、どうしようもなかった」

次ページ「お前、チクったな」と母からボコボコに
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事