「メメント・モリ」というラテン語がある。死は必ず来るのだから今を大切に生きよう、というメッセージが込められた格言だ。だがおそらく、どんな人間でも24時間365日を、その心持ちでいることは不可能だろう。
死にかけて生還した直後はメメント・モリを意識しても、平穏な日常を取り戻したら徐々に薄れ、無為に過ごしたり羽目を外したりしてしまうときもあるのが自然なのかもしれない。きっと、筆者もそうなっていただろうと想像する。

死にかけて学んだ「大きなこと」
しかし変化はなくても、病気を通じて学んだ大きなことが2つある、とコラアゲンさんは話す。
1つは、検査や検診に行くことの重要性。少しでも身体に異変を感じたら、すぐに病院に行ってほしい、と真剣な目で訴える。「忙しくて時間がないから」「多分大丈夫だから」と自分に言い訳をして検査を怠ると、いざ病気だった際、取り返しがつかないことになる恐れがあるからだ。
「脳梗塞や心筋梗塞のリスクがあると言われていたのだから、特化した検査を受けておくべきでした。検査を受けて、空振りだったら安心できるし、異変があれば早めに気づくことができる。
忙しい方は、検査で半日仕事を休むのも難しいかもしれないけど、その時間を惜しんだせいで病気が進行して、半年とか入院することになったらもったいないですしね」
当たり前のことのように聞こえるかもしれないが、サバイバーの言葉として非常に重みがある。実際にコラアゲンさんも、食生活などではたまに羽目を外すことがあっても、検診は欠かしていないそうだ。
もう1つは、種類や症状、重症度は違えど、病気は誰もが経験する普遍的なものであるため、他者との距離を一気に縮める最強のコミュニケーションツールになるということ。
「ゴルフとか共通の趣味の話でも人は仲良くなれますが、それ以上に親密になれるのは絶対に“弱さ”。弱さは人に見せたくないものだからこそ、見せてくれた人や共感してくれた人に対しては心を開いてくれるんですね。そう考えると病気の経験は、人生の最大公約数のカードなんです」
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