コラアゲンさんが心筋梗塞で救急搬送されているとき、こんなエピソードがあった。
救急隊員が、「心臓の痛みは0~10のうちどれ?」と質問してきたのだ。10と言いたかったが、基準がわからない。5では低すぎる気がするので、間を取って7と答えた。死にかけている状態なのに……。
そんなことをライブで話すと、大ウケするという。心筋梗塞という同じ経験をしていなかったとしても、痛みを伴うケガや病気をしたことがある人は、きっと共感できるだろう。

「悲劇こそ喜劇に変わる」
深刻さは違っても、コラアゲンさんのエピソードを自分の経験とつなげ、共感し、親近感を覚えてもらいやすいのだ。
コラアゲンさんがこれまで取材をしてきたヤクザや新興宗教などのネタで、観客が感じるのは「刺激」「驚き」「非日常ならではの面白さ」などが多い。漫談のネタとしては強い武器だが、題材のキャッチーさに頼っている部分も正直大きい。
逆に題材が「日常的なもの」であっても、普遍的であれば共感を呼び、がっしり心をつかむ。その「日常的なもの」の筆頭が病気になった経験だと、コラアゲンさんはサバイバーの当事者として気づいたのだった。
「僕は(元雨上がり決死隊の)蛍原徹くんとコンビを組んでいたのですが、彼だけが売れていった、という自虐ネタを定番にしてきました。師匠である演出家の喰始(たべはじめ)さんに、『悲劇こそ喜劇に変わる』と教えてもらったからです。病気になった体験をネタにしたら、悲劇であるはずなのに、たくさんの方が笑ってくれた。喰さんの教えは正しかったと、やっと答え合わせができました」
一方で、病気にかかって亡くなってしまったら、あるいは深刻な病状だったら、喜劇にはならないかもしれない。だから、病気をネタにするときは、観客がどう感じるかを想像し、慎重に組み立てていく。
ステージ1の大腸がんになった経験もネタにしたが、「ステージ4や5の方が見たときにどう思うか」を考え抜き、喰始さんにもダメ出しされながら形にしていった。その過程を経て、改めて「相手の立場に寄り添う」「相手の気持ちを想像する」ことの大事さを痛感したという。
コラアゲンさんは49歳のころ、歌舞伎町のホストクラブで働く体験取材をしたことがあった。そのときに先輩ホストから言われた言葉が、病気になって学んだこととつながった、と説明する。
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