何が運命を分けたのか。
それは、ステージ1の大腸がんでパニックになったように、「自分の弱さや情けなさをさらけ出したこと」だとコラアゲンさんは回想する。
ライブ中は緊張状態にあるため、本番中に体の筋肉がつることがよくあるという。その日も、単なる筋肉のつりかもしれない、と考えたが、最悪の事態を想定して助けを求めたことが大きかった。
「そういうときに『大事にするのは……』と遠慮される方もいらっしゃると思います。僕も本当に心筋梗塞かわからなかったし、救急車を呼んでください、とお願いするのは正直気が引けました。
けれど明らかに痛みが異常だったし、怖がりなので、『心筋梗塞かもしれないです』『近くに病院ありますか?』『行き方教えてもらえますか?』って館長に泣きついたら、すぐに救急車を手配してくださった。共演していた春風亭一之輔さんも、『空振りだった(心筋梗塞ではなかった)としてもいいから、すぐ救急車を呼んでもらったほうがいいです』と後押ししてくれました」
一般的に心筋梗塞は、発症して20分で心臓が壊死していくとされる。コラアゲンさんも手術まで2時間ほどかかったため、心臓の一部が壊死してしまい、もう治らないという。だが救急車に乗らなかったら、状態がより悪化していたのは言うまでもない。
また、もし歩いて病院に行っていたら、「この人は歩ける余裕がある」と判断され、診察が遅れていた可能性も否定できない。当時はまだコロナが流行しており、病院によっては病床がひっ迫していた時期でもあったからだ。躊躇せずすぐに救急車を呼んだ周囲の判断と、助かりたい一心で身をゆだねたことが、コラアゲンさんの命を救ったのである。

それでも死生観に変化なし
今度こそ本当に、生死の淵をさまよう経験をしたコラアゲンさん。日常生活を取り戻した後も、病気や死には常におびえ、定期的に検診にも通っている。たまに薬を飲み忘れると、パニックになるほど動揺してしまう。
だがやはり、「わかっちゃいるけどーー」がときどき発生し、結果的に生き方に大きな変化は生じていないのだと明かす。
「塩分の摂取は1日6グラムまで、ってお医者さんに告げられたんです。最初の1~2カ月は計量スプーンで量って、ストイックに守っていましたけど、のど元過ぎれば何とやらで。定期健診に行って、経過が順調となると、唐揚げをドカ食いしてしまうときもあったりする。仕事に対しても常にフルスロットルなので、心筋梗塞になったから何か変わった、ということは正直ないんです」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら