明暗分かれた2025年春闘、大手企業では満額回答続出の一方で、医療機関では「ベアゼロ」が相次いで、全国各地でストライキに突入
「4月からの地域手当、寒冷地手当の見直しが実施されると実質賃下げになる人も出てくる。20代の看護師からは人が足りず休みも取れず、もうこんな職場は辞めたいとの声が上がる。国立病院は不採算分野の医療も続ける最後の砦。若者たちが病院からいなくなったら、誰が命を守るのか。実際、機構では今年4月の採用予定者のうち1000人以上の欠員が発生している」。全医労の松本よし子副委員長は語る。
こうした回答は国立病院機構だけではない。医療関係の産別組織「日本医労連」によると、民間病院を含む多数の組合でゼロ回答だったという。
「全国47都道府県で1000を超える支部でスト決議が上がり、各地でストライキに入った。医療現場では定期昇給がせいぜいで、他産業の3分の1以下の賃上げにとどまっている。物価高で生活できない、だから賃上げが必要だと国も旗を振って全労働者が賃上げに向かう中、なぜわれわれだけがベアゼロで我慢しないとならないのか」。日本医労連の森田進副委員長は憤る。
物価高に追いつかない制度改定
背景にあるのが、診療報酬、介護報酬制度という公的制度の中で運営せざるを得ないのに、急激な物価高騰に制度改定がまるで追い付いていないという実情だ。前出の帝国データバンクの価格転嫁調査でも、病院などを含む「医療・福祉・保健衛生」は価格転嫁率14.4%と圧倒的に低い。価格が公的に定められており、急な仕入れコストの上昇に柔軟に対応できないためだとされている。
全国保険医団体連合会が2月に行った物価高騰の影響調査には、とにかく診療報酬を上げて欲しいという声が相次いだ。「今は診療を継続するために、持ち出してでも賃上げせざるを得ないが、とても続かない。今後閉院が相次いでもおかしくない状態だ」(森元主税副会長)。
大手企業を中心に賃上げラッシュとなった2025年春闘。ただ医療、介護福祉などエッセンシャルワーカーの待遇改善といった政府の積極的な関与が必要な分野への目配りは、引き続き欠かせないだろう。
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