ミドリムシが人類を救う、大志を抱くユーグレナ
あいにくの悪天候だった。1月25日、日本列島を襲った寒波で、大分県の山間部も一面雪に覆われていた。ユーグレナ社長の出雲充と経営戦略担当取締役、永田暁彦は、別府市の中心部から1時間以上も車を走らせた後、ひなびた湯治場付近の山道を歩いていた。酸性の温泉水が流れ込む水辺で、優良なミドリムシを採取するためだ。
吹雪の中で手がかじかむ。お目当ての水辺らしい場所にたどり着いたものの、水面は氷結していた。「参ったなあ」と苦笑いする出雲に永田がサンプリング容器を手渡した。出雲は容器で水底の泥まですくい入れた。永田は大事そうに容器をナップザックにしまい込んだ。
数日後、東京大学アントレプレナープラザ内にある同社本店では、昨年入社した研究部門の社員が泥水の中からミドリムシの存在を確認した。苦労したかいがあった。
「降雪で寒い状況だったので、水底の温かい土の中に潜り込んでいると思って泥ごと多めに採取しました。見つかって、ほっとしました。そりゃ、うれしいですよ。いわば自分の娘がオーディションに出るわけですから、ドキドキします」
その瞬間の気持ちを、出雲は満面の笑みを浮かべて語る。ミドリムシ・オタッキーである。
ミドリムシの可能性 大企業と次々提携
「ミドリムシに魅了された」出雲たちがユーグレナを立ち上げたのは2005年8月。植物と動物の両方に分類されるミドリムシはその分、多様で豊富な栄養素を体内に保有している。それを抽出し、食品などに商品化するために、優秀なミドリムシを収集し、効果的に培養する──そんな事業を始めるための起業だった。