ミドリムシが人類を救う、大志を抱くユーグレナ
実際に、「ミドリムシ油」を見せてもらった。精製されたもので、透明な黄色をしている。試験管の底にちょっとの量。具体的には10ミリリットルしかないが、このために要するミドリムシは「100億匹」と研究開発担当取締役、鈴木健吾は言う。実用化のためには、効果的な培養方法の開発が重要である。
次いで、ユーグレナに世の中の耳目が集まったのが10年10月の住友共同電力との共同研究だ。同電力壬生川火力発電所内にミドリムシを培養するタンクを設置し、火力発電で発生するCO2をミドリムシが光合成で酸素に変える。CO2削減プロジェクトである。
この共同研究を始める前にユーグレナでは、実験によってある結論を得ていた。「通常の空気と比べて400倍の濃度のCO2環境の中で、ミドシムシは最も早く成長する」
火力発電で発生する排出ガス中のCO2濃度は、大気の350倍程度。人間には不適切でも、ミドリムシには理想的な生育環境となる。この実証実験ではCO2の3%削減を目指している。現状、削減率は0・01%にすぎないが、培養タンクの設置場所などの改良によって、培養速度が速まり、CO2削減率が高まることが予想されている。
実は、多くの電力会社から火力発電のCO2削減の共同実験へのラブコールが寄せられている。だが、「当社の陣容や日本のミドリムシ研究者の数からして手が回らない」と出雲はうれしい悲鳴を上げる。
環境問題への切り札として、ユーグレナは引っ張りだこだ。この2月にもミドリムシを活用した東京都との下水処理の共同実験開始を発表したばかり。株主には、JX日鉱日石、日立プラント、清水建設、全日本空輸、伊藤忠など大企業がズラリ。