ミドリムシが人類を救う、大志を抱くユーグレナ
世界中でトウモロコシや大豆を活用したバイオ燃料が製造されているが、ジェット燃料用の開発は芳しくなかった。食料と燃料で穀物を奪い合うという問題も顕在化していた。追い打ちをかけるように、EUがCO2削減に向けた新規制を打ち出した。このままではEU諸国に就航する航空各社は、巨費を投じて排出権を買わなければならない。期限は2018年である。解決策として新日石が注目したのがミドリムシだ。
08年ごろ、ユーグレナに新日石の社員がやってきた。「バイオジェット燃料の実験をしている。ミドリムシ油を見せてくれませんか」。出雲は開発中のミドリムシ油を手渡した。2カ月ほど後、新日石の社員が再びやってきた。「われわれが世界中で集めたどのバイオ燃料とも違う。なぜですか」。出雲は答えた。「ほかのバイオ燃料はみんな植物製ですが、ミドリムシは植物であり動物なので、ほかの油とは性質が異なります」。
新日石は付加価値が高いバイオジェット燃料に、ミドリムシがなる可能性に気がついたのだろう。以後、両社は基礎研究を始めた。そこに、「日本航空、全日本空輸の2社がバイオ燃料の開発効果に期待している」との話を持って、日立プラントテクノロジーが現れた。
09年12月には、新日石と日立プラントを引き受け手とする第三者増資も実現し国の助成金も得た。共同研究の開始を対外的に発表した時点で、研究着手から約2年経過しており、「研究は中盤に差しかかっていた」。そこからすでに1年半、気になる開発状況を尋ねると「企業秘密。でも、いずれ発表できます」と出雲は自信をのぞかせる。