60歳を過ぎたら意識すべき「正しい脳の使い方」 「新しいことへの挑戦」ばかりでは裏目に出る
2019年、ハーバード大学の研究チームが、脳バンクに提供された高齢者の脳を調べたところ、100歳以上の人の脳には70〜80歳で亡くなった人よりも、「レスト」という遺伝子がたくさん発現していました。
休め遺伝子は脳活動の過剰な活性化を抑える役割があって、体全体の活動をゆるやかにして負担をかけないことで、脳の寿命を伸ばす効果が世界的に注目されています。
私も、脳を活性化するために新しいことに挑戦したり、新しい人間関係をつくることをすすめてはいますが、「やりすぎ」は禁物です。脳の活性化は大切なのですが、「過剰な活性化」は抑えなければなりません。
中高年になっても若いときと同じようにアクティブに活動をしていると細胞が傷つきやすくなります。若いときと同じように行動することは細胞の観点から見るとNGです。
でも、一度習慣化してしまうと人はなかなか変えられません。ついついアクティブになりすぎたり、無理をしてしまいます。そこにブレーキをかけるのが休め遺伝子です。
脳は「休養」と「挑戦」のバランスが重要
中高年になると、若いときのような情熱、やる気が薄れてくることがありますが、これは自分に無理をさせないための防御機能でもあります。ですから「最近、昔ほど何かに熱くなれない」「モチベーションが落ちた」というのは、何も悪いことだけではないのです。
むしろ、自分の脳と体を守るために必要なことでもあるのです。その代わりに冷静さが生まれてきます。
昔バリバリ仕事で活躍した人が、いざ情熱ややる気が薄れてくると「自分はどうしてしまったんだろうか?」「昔の自分を取り戻したい」と悩む人もいますが、これは加齢とともに起きる現象で、ある程度はしょうがないものです。
「情熱ややる気が薄れるのは自分のせいではなく遺伝子のせい」そのくらいに思っておくほうがいいかもしれません。実際にこの休め遺伝子は、脳の老化を抑えてアルツハイマー型認知症を予防してくれます。
考えてみてください。60歳になっても、70歳になっても、昔のような活動をしていたら、体はボロボロになります。生命を守るためにも必要なことなのです。
情熱ややる気が落ちてくることは、休め遺伝子が正常に働いている裏返しでもあります。ですから、これまでとは視点を逆転させて、「冷静さ」を強みにするくらいの感覚を持つのがいいと思います。
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