
海外ではなぜ国家的な近視対策が進んでいるのだろうか(撮影:梅谷 秀司〈右〉、神保氏〈左〉は本人提供)
WHO(世界保健機関)によると「2050年には世界人口の約半数が近視になる」と予測され、世界ではさまざまな近視対策が取られている。特に近視の子どもは年々増加しており、日本でも小学生の半数以上が近視である。今や国をあげて取り組むべき課題といわれる近視だが、日本ではまだその重要性がほとんど知られていない。
今回は、「近視は予防に取り組むべきリスクの高い疾患」だと啓蒙活動をする眼科医の窪田良氏と、アジア太平洋の安全保障に詳しい国際政治学者の神保謙氏による対談を行った。第2回は、なぜ中国では近視対策が国家プロジェクトとして進められているのか、その背景にある中国が抱える人材戦略の問題について紐解いていく。
なぜ中国では近視対策が進んでいるのか
窪田:中国では、2018年から国家プロジェクトとして近視対策に取り組んでいます。近視の抑制につながる屋外活動を推奨し、小学校では1日2時間の屋外活動を義務づけました。当時8割近かった高校生の近視率を、2030年までに7割以下にすることを目標に掲げています。

(出所)窪田氏提供
そうした背景にも、もしかしたら軍事力強化の狙いがあるのではないかと思うのですが、神保先生はこのプロジェクトについてはどう思われますか?
神保:もちろん公衆衛生や経済対策の一環として、非常に重要な取り組みだと思います。
ただ、窪田先生がおっしゃるように、裏側には軍事力に関わる国家戦略があるかもしれません。たしか中国都市部の若年層の近視率は非常に高かったですよね?
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