中国が「1日2時間の屋外活動」を義務化した理由 国家プロジェクトで小学生の近視を予防する時代に

✎ 1〜 ✎ 28 ✎ 29 ✎ 30 ✎ 31
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

神保:その対策として、「学習塾禁止令」で幼少期からの受験戦争をやめさせようとしたのではないかと。もう一つの目的は、2021年に習近平国家主席がスローガンに掲げた「共同富裕」にあります。これは社会全体が幸福で豊かな生活を送れるようになることを目指す考え方で、具体的には貧富の格差是正を指します。

窪田:それだけ中国では貧富の差が広がっていると。

「求める人材像」に変化が

神保:そうなんです。受験戦争を勝ち抜くために学習塾が必須となれば家族は惜しみなく塾にお金を注ぎます。富める者が優位となる構図ですね。そこから解放しようと考えたのが「学習塾禁止令」につながったのだと考えています。

窪田:たしかに学習塾によって受験戦争はどんどん煽られていきます。

神保:中国にしてみたら、将来必要なのは次世代の産業を発展させていけるような人材です。とすると、大学よりも高専などで学ぶような、より実践的な技術を身に付けた人がほしい。受験戦争によってホワイトカラー的な人材を大量生産しても、意味がないと気付いたのではないでしょうか。

窪田:最終的に求める人材をイメージして、受験システムそのものを変えていったということですね。

最近では日本の大学受験でも総合型選抜の導入が進んでいますが、それも多様な人材を育てていくためのシステムです。次回は、日本における総合型選抜(AO入試)のパイオニア的な存在である慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)の教育について、神保先生にお聞きしていきます。

(構成:安藤梢)

窪田 良 医師、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

くぼた りょう / Ryo Kubota

慶應義塾大学医学部卒業。慶應大医学部客員教授、米NASA HRP研究代表者、米シンクタンクNBR理事などを歴任。虎の門病院勤務を経て米ワシントン大学助教授。2002年創薬ベンチャー・アキュセラを創業。2016年窪田製薬ホールディングスを設立し、本社を日本に移転。アキュセラを完全子会社とし、東証マザーズに再上場。「エミクススタト塩酸塩」においてスターガルト病および糖尿病網膜症への適応を目指し、米FDAからの研究費を獲得し研究開発を進めているほか、在宅医療モニタリングデバイスや、ウェアラブル近視デバイスの研究開発を行っている。

この著者の記事一覧はこちら
神保 謙 慶応義塾大学総合政策学部教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

じんぼ けん / Ken Jimbo

慶応義塾大学総合政策学部教授、公益財団法人国際文化会館常務理事、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API) プレジデント。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了(政策・メディア博士)。専門は国際政治学、安全保障論、アジア太平洋の安全保障、日本の外交・防衛政策。タマサート大学(タイ)で客員教授、國立政治大学(台湾)で客員准教授、南洋工科大学ラジャラトナム国際研究院(シンガポール)客員研究員を歴任。政府関係の役職として、防衛省参与(2020年)、国家安全保障局顧問(2018~2020年)、外務省政策評価アドバイザリーグループ委員などを歴任。主な著書に『検証安倍政権:保守とリアリズムの政治』(共著、中央公論新社、2022年)など多数。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事