つらい「7K職場」が劇的改善した3つの理由 30歳までに女性の7割が辞める会社が激変

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特に高かった女性社員の離職率については、女性新卒採用者の30歳までの累積退職者数の割合が2006年は70%であったものが、2015年には27%にまで改善。2013年には女性ライン職登用目標も掲げていますが、社員の女性からは「働き方改革をするという会社の本気度がわかったので、管理職になることも前向きに捉えられた」という声が出ていました

「うちの業界では働き方を変えるのは無理」と感じていた人も多いと思うのですが、特にきついことで知られるIT業界のSCSKが改革を成功させたことで、人材獲得競争に焦りを感じたほかの同業他社も動き出しています。業界や業種の固定概念を打ち破る企業が出てくると、世の中が変わっていき、女性活躍を阻む要因も払しょくされていくのではないかと感じます。

メンタルヘルス、生産性……

繰り返しますが、SCSKは、女性のためにこうした働き方改革を実施したわけではありません。最近いろいろな会社の方々とお話していると、実際に長時間労働は女性だけではなく、さまざまな人にネガティブな影響を及ぼしていると感じます。

男性でも家庭と仕事の板挟みになっている人は増えています。前提の働き方が変わらない中で時短社員が増えると、しわ寄せが残りの人たちに行って疲弊してしまうという問題もあります。

管理職の方からは、「育児中の人は全力で働けない期間の見通しがある程度立つけれど、働いている本人がメンタルヘルスなどを抱えたケースではより見通しが立ちづらく、必要な配慮も複雑になる」という声を聞きます。メンタルヘルスを予防し、すべての社員が生き生きと成果を出せるような組織にすることが、結果的に女性活躍も推進するということになればいいなと感じています。

「皆が基本的には18時に帰る」という社会が実現したら、多くの問題は自然と解決していくのではないかと感じます。この連載はひとまず終了しますが、引き続きさまざまな発信活動と所属企業のお客様支援を通じて、日本の会社の働き方改革、そして女性活用に貢献できればと思っています。またどこかでお会いしましょう。

中野 円佳 東京大学男女共同参画室特任助教

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なかの まどか / Madoka Nakano

東京大学教育学部を卒業後、日本経済新聞社入社。企業財務・経営、厚生労働政策等を取材。立命館大学大学院先端総合学術研究科で修士号取得、2015年よりフリージャーナリスト、東京大学大学院教育学研究科博士課程(比較教育社会学)を経て、2022年より東京大学男女共同参画室特任研究員、2023年より特任助教。過去に厚生労働省「働き方の未来2035懇談会」、経済産業省「競争戦略としてのダイバーシティ経営の在り方に関する検討会」「雇用関係によらない働き方に関する研究会」委員を務めた。著書に『「育休世代」のジレンマ』『なぜ共働きも専業もしんどいのか』『教育大国シンガポール』等。

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