ひとつ目については、「人」こそが収益の源泉になるIT業界において、昼休みに自席で突っ伏して寝ている人がいる、トイレに入るのにも並ばないといけないなど明らかに生産性の低下につながっている状況が、親会社から就任した当時の中井戸信英会長兼社長(現SCSK株式会社代表取締役会長)を突き動かしたと言います。
中井戸氏のもと、本社移転、残業削減運動、健康増進運動などが進められますが、とにかくトップダウンが徹底しています。残業代を削減したいためにやっているわけではないというメッセージを伝えるため、残業削減目標を達成した部署にボーナスを出す、顧客企業や社員の家族に手紙を出すなど、トップのコミットあってのユニークな施策を打ち出しました。
ある程度残業が減った2014年以降も手綱を緩める気配はなく、現在は残業が20時間、40時間……と目標よりも20時間超え社員が出るたびに、勤怠管理の承認プロセスが部長、本部長、最後は社長と上がっていく仕組みになっているそうです。これは現場の社員や管理職にとっては避けたい事態でしょうから残業削減をするインセンティブになりますし、それでも発生するときは、何かトラブルが起こっているということ。
結果的にそうした「異常事態」を上位層に報告することとなり、トラブルを早めに把握し、役員レベルで解決の手を打てるなど企業のリスク管理にもつながっているようです。
強制ではなく部門ごとの創意工夫も成功の要因
2つ目は、残業削減の方法について権限移譲をしています。強制的に一律の方法を入れるのではなく、現場の管理職が部門ごとの事情に合わせて創意工夫を促している点が成功要因ではないかと感じます。
実際に有効だった施策は、業務の見直しや会議の資料を作るときのルール策定などだったとのこと。人事が提案した施策以外にも現場から出てきたアイデアで効果が高そうなものを社内で共有するなどして残業削減の動きを横に広げています。
ちょうど企業合併があったこともあり、どこまでを社員が担い、どこからを外注先に業務委託するか、業務配分や評価制度も含めて見直すタイミングがあったこと、社員同士が意見を出し合いながらすり合わせていくフェーズだったのも幸運だったかもしれません。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら