こうやって見ていくと、会社側の働きかけなどで一時的に女性の意識やスキルを引き上げたとしても、①のライフイベント後は働き続けられないような働き方である限り、構造的な問題は変わらないと感じます。
企業は、女性活躍推進新法で女性管理職の数値目標を掲げることを促されています。今後、その目標を達成すること自体は、もしかしたらそう難しくないかもしれません。でも、構造を変えずに目標を何とか達成しても、上がれなかった男性からのバッシングもあり本人たちも辛いでしょうし、その後に続く女性も出てこない可能性があります。一度目標は達成しても、再び数値が下がってしまうということになりかねないと感じます。
女性の意識改革や、スキルアップ研修などを効果的に導入することは重要ですが、根本的には「働き方改革」を併走させないと真の女性活躍は達成できないと感じます。ただ、注意が必要だなと思うのは、ここで「女性が長く続けられるために働き方を変えよう」というロジックにすると「長時間働ける男性なども仕事を抑えろというのか」ということになってしまいがちです。
人材不足を肌で感じている企業や女性向け商品を売っていきたい企業は「女性が増え、活躍するメリット」を痛感していると思います。ただ、多様性そのものがもたらすイノベーションなどは実感しにくいこともあり、「何のために女性活躍を推進しないといけないのか」に納得できていない会社も多いと思います。
そんな中では、「働き方を変える」ことのメリットが、女性にもあるし、ほかの人すべてにもあるという方向性で、結果的に女性活躍推進の素地が作られていくことが理想だと思います。今日はその意味で成功している企業の事例を紹介したいと思います。
7K職場のあの会社が変わった!
私は新聞記者になったばかりの新人時代、IT業界を担当していたのですが、この業界は「3K(きつい、厳しい、帰れない)」どころか「7K」と言われていました。規則が厳しい、休暇がとれない、化粧がのらない、結婚できない……などが加わるそうです。
なので、2年前、「人を活かす会社ランキング」の上位にSCSKという社名を見つけたとき、一瞬目を疑いました。私が取材していた時期は住商情報システムとCSKが合併してSCSKになる前でしたが、7Kと言われたIT業界でこのランキングの上位に入るなんてことがあるのかと思いました。
実際のところを知りたいと思い、当時からお世話になっていた役員の方を含め、これまで何人かに取材をさせてもらっています。SCSKの残業削減に向けたさまざまな取り組みは、メディアで紹介されているのですが、月の残業時間は合併前の2008年の35時間から2014年度に18時間まで減少。有給休暇取得日数も平均13日から19日へと改善しています。
私はこの改革の成功要因を次の3つだと思っています。
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