島津製作所、「分子診断」でがん検査を変える 分析機器が続伸、中国減速の影響をかわす

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中国向け低迷もあり医用機器事業がいま一つ冴えない中、島津製作所が注力しているのが、分析計測機器事業における「分子診断」の拡大だ。

たとえば、がんの検査は、同社の医用機器でも既存のX線撮影装置を使えば画像診断を行うことができる。ただ、X線による画像診断ではがんが3ミリメートル程度以上にならないと判別しにくい。これを分析計測機器で血液検査を行えば、1ミリメートルあるいはそれ以下の超早期がんが見つかる可能性が出てくる。同社の質量分析計により、血中の代謝物やタンパク質の微量の変化を分子レベルでとらえることで、がんの診断が可能となるためだ。

同社は2014年3月発表の中期経営計画(2014~2016年度)で、分子診断の売り上げ規模を2016年度には57億円に拡大する目標を掲げた(2014年度実績は20数億円)。同中計では2016年度の医用機器事業の売り上げ規模として660億円を目指しており、分析計測機器のうち分子診断事業だけで、医用機器の1割近くに匹敵する計算だ。もっとも、現在の分子診断事業の売り上げは研究機関向けがほとんど。これを病院など臨床現場で使うには、各国の医療規制に対応する必要がある。

分析機器と医用機器が融合へ

上田輝久社長は今年6月下旬に就任したばかり。分析計測事業部の長を4年間務めてきた

島津製作所ではすでに分析計測機器について2013年以降、日米で医療機器向け品質マネジメント規格ISO13485の認証を取得し、米国FDAと日本の医薬品医療機器等法(旧薬事法)におけるクラスI医療機器に相次ぎ登録、欧州でも体外診断用医療機器指令(CE-IVD)への対応を順次進めている。これによって、「全世界で医療の分野で分析計測機器を使っていくときのハードルをかなり下げることができた」(上田社長)という。

いわば、既存の医用機器に続いて、これまで臨床現場であまり使われなかった分析計測機器も「医療機器」分野に展開していくことになるわけだが、医療という共通分野で両事業はどのように連携していくのか。上田社長は「分析計測機器と医用機器の融合領域が必ず生まれてくる。(今後の経営方針の一つとして)その融合領域を明らかにしていきたい」と説明する。

足元では分析計測機器の「一本足打法」で業績好調を保っているようにも見える同社。中期的な成長路線を確実にするには、まずは売り上げ規模で第2の柱といえる医用機器事業において中国の反腐敗運動の余波をしのぎつつ、分析計測機器事業との連携も生かした底上げへの道を探ることが一つの課題といえそうだ。

大滝 俊一 東洋経済 記者

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おおたき しゅんいち / Shunichi Otaki

ここ数年はレジャー、スポーツ、紙パルプ、食品、新興市場銘柄などを担当。長野県長野高校、慶応大学法学部卒業。1987年東洋経済新報社入社。リーマンショック時に『株価四季報』編集長、東日本大震災時に『週刊東洋経済』編集長を務め、新「東洋経済オンライン」発足時は企業記事の編集・配信に従事。2017年4月に総務局へ異動し、四半世紀ぶりに記者・編集者としての仕事から解放された

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