島津製作所、「分子診断」でがん検査を変える 分析機器が続伸、中国減速の影響をかわす
中国人民銀行が人民元切り下げを発表し、日本企業の間に「中国減速」懸念が急速に高まったのは、その直後の8月中旬に入ってからのこと。にもかかわらず、冒頭の上田社長のコメントのように、島津製作所の上方修正シナリオにひとまず変更が生じていない理由はなぜか。
島津製作所の地域別売上構成比のうち、中国が占める割合はこの第1四半期で18%。日本の43%に比べれば半分未満にすぎないものの、米州の16%や欧州の8%は上回り、海外事業の中ではトップの構成比だ。前年同期比での増収率を見ても、中国は16%増と高い伸び率を示し、為替の円安が追い風となった米州の28%増には及ばないが、10%増そこそこの日本や欧州は上回っている。
「反腐敗」響くが、「食の安全」が追い風
ただ、中国での展開は、事業セグメントによって「かなり違ってきている」(上田社長)のが実情だ。同社では第1四半期ベースの詳細な数値を明らかにしていないが、前2014年度ベースで見ると、中国では分析計測機器が前期比10%増の378億円と大きく伸びた反面、医用機器は17%減の61億円と大きく落ち込み、産業機器も4%減の70億円と低迷している。
「例の反腐敗運動が、大型の入札関係に影響した」――。医用機器の足元での低迷について、上田社長はこう説明する。「反腐敗運動」とは中国の習近平政権が進める、官僚の汚職防止政策をいう。中国における医用機器の販売先は、官公庁などの公的機関が主力。それが反腐敗運動の余波で官僚が萎縮し、正常な入札案件についても滞った状況にあるという。
一方、主力の分析計測機器については、「反腐敗運動に足を引っ張られる分野もたしかにあるが、食品の安全分野など、それ以外の大型入札案件が進むようになってきた」(上田社長)。中国のCFDA(米国FDAや日本の厚生労働省に相当)が、これまで国の行ってきた食品の安全に関する受託分析をすべて民間企業に移そうとしていることなどが、分析計測機器については追い風になっている。中国事業全体としては、医用機器の低迷でいくぶん減殺されるものの、分析計測機器の伸びが成長を牽引する形がしばらく続きそうだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら