多世代が集う「ボーダーレス福祉施設」に見る未来 グッドデザイン金賞受賞の「深川えんみち」

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旧建物のタイルや、神社から譲り受けた敷石などを使用して手作りした「かまどひろば」。ピザを焼いたりお米を炊いたりして活用しています(写真撮影/片山貴博)
「実はプライバシーの観点から、当初は『まちキッチン』にパーテーションを設けるつもりでした。でも『隠されている部分がないほうが安心だし、かえってトラブルも生じにくい』と、働きながらみんなで開く・閉じるのバランスを考えていくことに。福祉従事者としての覚悟と懐の深さが、のびのびとした空間に導いたと感じます」(長谷川さん)

多世代の触れ合いで得られる豊かさを日々実感

2024年5月に建物が完成して8カ月。以前はなかった光景が見られるといいます。

「子どもたちは日々、お年寄りに宿題を見てもらったり、本を読んでもらったりするほか、ときにおばあちゃん同士のもめごとを見ることも(笑)。

デイサービスは認知症の方も来られますから、日常の行いができなくなる姿を目の当たりにすることもあります。そうしたことが児童の人生にどう影響を及ぼすかは、大人になってみないと分かりません。でも、『人が老いる』ということに触れた体験は、無駄にはならないはずです」(押切さん)

未就園児から地域の住民まで、さまざまな人が行き交い、時間の流れが感じられる分、デイサービスの利用者には、いきいきとした表情が見られるようになったといいます。

「デイサービスの『まちキッチン』のトイレには『おむつ交換台』があって、『子育てひろば』に参加したお母さんが、赤ちゃんを連れて来ることが。そんなときお年寄りの方たちは、『こっちに来て』『抱っこさせて!』とたちまち元気になって(笑)。現代は核家族化しているので、親御さんにとっても得がたい経験になっていると思います」(竹内さん)

2階の「こどもひろば」。奥の小上がりを上ると丸い窓があり、段差に腰かける、段差を机にして宿題をする、外を眺めるなど、思い思いに過ごせます(写真撮影/片山貴博)
「こどもひろば」にはキッチンがあり、大人は児童を見守りながらおやつの準備ができます。開放感とやわらかな雰囲気が生まれるよう天井は高くし、壁や天井は漆喰で仕上げました(写真撮影/片山貴博)
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