多世代が集う「ボーダーレス福祉施設」に見る未来 グッドデザイン金賞受賞の「深川えんみち」
「社会に参加していく精神を『パブリックマインド』といいますが、この施設がそれを育む場になれば」と口をそろえる2人。とはいえ、開かれた施設をつくるとなると、責任を伴うことだけに一筋縄にはいきません。
はじめはスタッフに戸惑いが見られましたが、しかし、何度も議論を重ねるなかで「より人間らしい生活」という点でみんなの意見が一致。プロジェクトが始動しました。
自然と引きこまれ、心地よくつながれる空間を目指す
「ひと口に“地域に開く”といっても、物理的にただ開放すればいいわけではありません。建築家は、施設に関わる人たちと、まちの個性とがかけ合わさることで生まれるリズムを読むことが大切。ともに施設をつくる仲間として、同じ目線に立ち、フランクにコミュニケーションを取っていくことが、成功のカギだと思います」
そう話すのは、「深川えんみち」の設計を担当したJAMZA一級建築士事務所、共同代表の長谷川 駿(はせがわ・しゅん)さんです。
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「『深川えんみち』は、古くからまちの人に親しまれ、観光スポットにもなっている寺社『深川不動堂』と『富岡八幡宮』の間にあります。
年間を通して多種多様な人が行き交う地域の特性と、放課後に子どもたちが施設に駆け込んでくるダイナミックな流れを設計に落とし込み、関係者はもとより、来訪した人たちもが互いにプラスの働きかけをしていける場所にしたいと思いました」(長谷川さん)
そこでテーマにしたのが、人が自然と引きこまれ、周囲と心地よくつながっていける空間づくりです。人通りの多い北側の外観は、もともとはシャッターが下りていましたが、「生活の様子が見えれば足を踏み入れやすくなるはず」と全面ガラス戸に。
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最も象徴的なのが、1階にある北側と南側の出入口をまっすぐ結ぶ、広めの廊下です。
ここはいわばまちの“公道”。道(廊下)のかたわらには、デイサービス利用者のための活動スペースや、まちの人も利用できる私設図書館「エンミチ文庫」、バイタルチェックを行える「健康コーナー」、学童保育クラブに続く階段などがあり、夕方、学校から帰った子どもたちは、「ただいま!」とデイサービス利用者らとあいさつを交わし2階へ。
一方、まちの人たちは、ふらりと「エンミチ文庫」に立ち寄ることができます。「エンミチ文庫」では、オーナーが店に立つ“店番制”を導入。通りすがりに興味を持ってくれた人に声をかけたり、訪れた人を見守ったりできる仕組みもつくりました。
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